本の帯の通り「食は人なり、じんせいなり」って感じさせてくれるシリーズです
今、6冊目を読んでますが、数々の言葉が心に残っています
「はじめ食堂」という名前の食堂を経営するお姑さんとお嫁さん、と言っても母娘よりも良い関係
べたべたせず、相手の気持ちを察して信頼しているバディみたいな感じの高齢な二人
共に旦那さん達は結構若いうちに急逝しているけど
お姑さんががそばに居てくれたから最愛のひとを亡くした時に
自分には家族が居てすぐ傍で支えてくれるって思えたから
悲しみの淵にずっと佇んでいないでて済んだんだという
お嫁さんの心の中の台詞
そして、そこに集まる常連さん達も、人の心にずかずか入って来ない、
過去に色々あったけど、今はそれらを乗り越えて無かったようにさりげなく生きてる人たち
老若男女、お金持ち、そうでない人、昔からの佃に住んでいるひと、タワマンの住人さん達
お客さんは様々だけど皆んなひとの良い、他人を心配するけど詮索はしない下町風のキャラクター
あるエピソードでは
奥さまが数年前に逝かれた、名門ホテルの特別顧問の常連さんの一人が
或る春に自分のマンションの庭の桜が綺麗だからと
おばちゃん達や他の常連さんをお花見にお招きして
皆んなが帰った後、急逝された奥さまのことをおばちゃんたちだけに話す
20年も前に夜桜見物に行って、その景色がこの世のものと思えないほどの美しさだったことと
引用ですが
「その翌日、妻は弁当を作ったんです。来年は桜の下で弁当を食べようと約束して
家で昼に食べました。約束は守れませんでしたが、あの弁当はよく憶えています。
梅干しとおかかのおにぎり、卵焼き、塩鮭、高野豆腐と干し椎茸の含め煮…。
今にして思えば、僕たちの結婚生活のような弁当でしたね、
特別豪華でもないが、心地良く舌に馴染んだ、飽きのこない味で」
しみじみと噛みしめるような口調だった。
幻想的な夜桜が有り有りと頭の中に浮かび、
普段殆ど私生活を語らないひとの台詞だからこそ
心に刺さりました
生活の中のご飯て、そういうものなんですよね
なんでもない味、なんでもない食卓
その一つひとつのおかずが口にすっと自然に入って
知らないうちに心と体が温まる
そしてほっとするひととき
このシリーズは美味しい一品たちが沢山出てきて
巻末に主だったレシピも載っていて
自分でも作ってみたく思わせてくれます
そして一緒に食べてくれるひとに美味しいものを食べさせたくなる
また、家族や自分の大切なものををしみじみ有難いと思わせてくれる
ほっとする人生のレシピ本でもあります
まだシリーズ途中までしか読んでいませんが
一冊読み終えるごとに読んで良かったと思え
どこかにこんな食堂があったら
私も行ってみたいです