
気になる本があったので読んでみました。ドイツ人の探検家、テオドール・イリオンが1930年代初頭にチベットの「神秘なる地」に足を踏み入れた際の体験手記なんですが、物語としてよりも、思想や信条への考え方は、貴重な資料です。
「友よ、自分を善人だと考えている人間には注意することだ。自分が善いと思い込んでいるときこそ最悪なことが多いものだ」P.144
「造られた者は、神のようになろうとして、自分のワクを越えるようなことがあってはならないのだよ。人間がそのようにすれば、想像主に反逆した天使たちのように振舞うことになってしまうのだ。…創造主に対して最大最悪の罪を犯すことになる」P.217
神のように善良であろうとする理想主義がこれまで世界にもたらしたものは、残虐性や宗教戦争ではないだろうか。自らを高め世俗に生きる他者を見下して裁く、そのエネルギーのほんの僅かな部分でも自分の内面を見つめることに使えば、世界はもう少し良くなっていたと思います。
第11章では「秘伝者の地下都市」の様子が出てきます。
「それから、都では何もかもが実にきちんと、驚くほどうまく編成されていた。まるで、誤りを知らない天才によって、すべてのことが計画されているかのようである」P.249
「都を覆う心霊的な空気が批判的、方法論的な思考を非常に難しくしているように思えた」P.258
「彼はとても真面目にこのことを考えているようだ。彼はわたしを世界の善のために働く同胞団に加わらせたいと願い、私に選択の自由を与えてくれているのだ」P.261
「哀れな、親切な男よ!この男は自分が多いなる光の都市にいると思い込んでいるのだ。そして、わたしが「救い」を求めていないことを悲しく思っているのだ。一瞬、わたしは、彼が悪魔の都にいることをはっきりいうべきだろうかと思ったが、それはできないと感じた」P.292
うーん、私も似たような地下都市に入っていたことがあるような気がします。なんか、主人公に思い切り共感してしまいました。ある意味貴重な経験ができたんですね。