歯や歯根の解剖学的形態は、おおよそ平均的なもの(出現頻度の高いもの)から、時には平均からかけ離れたものまで様々です。

ヒトの顔がそれぞれ異なるように、歯のもつ顔(形態)も個人差があります。


例えば、歯の形や大きさ、歯根の長さや数、歯根の形態(湾曲度や癒合の有無、樋状根など)、そして根管の数など、個々人によって全く異なります。

一方で、親子で歯の形態や歯並びが驚くほど似ていることも珍しくはありません。



歯学生として歯科医学を学ぶときは、臨床で遭遇頻度が高い、おおむねスタンダードなものを中心に勉強します。

しかし、実際の臨床では、しばしばレアなケースに遭遇することがあり、治療を困難なものにしています。


下顎第二大臼歯の樋状根や、上顎大臼歯の第四根管、2根をもつ下顎小臼歯、4根をもつ下顎大臼歯などは、比較的よく遭遇します。

臨床では、診査・診断を行うにあたり、症状から病気や病因を予測するという作業が非常に有用です。

これは、決してヤマ勘とは異なり、臨床勘と言い換えることができるかもしれません。

臨床勘を養うには、多くの良質な経験を積むことが必要です。


そして、極稀に、今までに経験したことがないようなレアケースに遭遇することもあります。

2根をもつ上顎側切歯や3根をもつ上顎第一小臼歯、また4根をもつ上顎第二大臼歯などです。



 
矯正治療のために便宜抜歯した上顎第一小臼歯。通常は1~2根であるが、この歯は3根存在している。



歯根や根管が複雑になると、根管治療の診査・診断は非常に難しく、治療そのものも困難になります。

根管治療がうまくいかないのは、手技以前に、診査・診断が的確でない場合が多いと言えます。

このようなことからも、根管治療を単に虫歯治療の延長と簡単に考えてはいけません。

歯の治療で後悔しないためにも、根管治療は経験豊富な先生にご依頼されることをお勧めいたします。
 
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