歯科治療では、歯茎や顔が腫れることが起こりえます。
歯の抜歯やインプラントなどの外科手術は、組織に侵襲を与えるので、当然ながら歯茎や顔が腫れることがあります。
しかし、外科処置に限らず、歯科治療では歯茎や顔が腫れることもあります。
歯科では、術野(処置する部分)を乾かしたり、歯を削ったりするために、圧縮空気(エアー)を使います。
このエアーの圧力は意外と強く、組織が疎な部分から体内へと空気が入り込むことがあります。
これを「皮下気腫:ひかきしゅ」と呼んでおり、歯科における偶発症の一つに数えられています。
皮下気腫は、次のようなときに起こる可能性があります。
●歯や骨を削る必要のある抜歯(特に親知らずの抜歯)
●根管治療時における、根管の乾燥や薬液洗浄
●電気メスなどによる、歯肉息肉除去(歯茎の切除)の際の乾燥
●レーザー使用時における、クーリング(冷却)のためのエアー
など
これらの中で、皮下気腫が起こる可能性が高いのは、親知らずの抜歯です。
歯茎を切開して剥離(はくり;はがすこと)し、エアータービンと呼ばれる高速切削機械で歯や骨を削る際に出る圧縮空気は、十分注意をしないと、剥離された歯茎から容易に体内に入ります。
皮下気腫になると、エアーが体内に入った瞬間に痛みを生じ、急激な腫れを生じます。
皮下気腫に特徴的なのは、当該部を押すと、エアーがはじけるプチプチ、プツプツという捻髪音(ねんぱつおん)や握雪感(あくせつかん:雪を握ったような感じ)があることです。
通常、皮下気腫は、抗生剤による感染予防を講じれば、特別な処置を必要とはしません。
しかし、気腫が大きく、もし気道を圧迫する恐れのある場合や息苦しさを訴える場合には、命に関わりますので、緊急入院が必要になることもあります。
いずれにしても、歯科治療後に異常な腫脹がある場合には、早めに担当の先生にご相談しましょう。