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今回は、抜歯による歯茎の萎縮(いしゅく;ボリュームが無くなること)について書きます。

歯根(歯の根っこ)を支えているのは、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる顎の骨の一部です。

この歯槽骨は、歯根を支えるために発達した骨で、仮に歯が無くなると萎縮してボリュームが無くなってしまいます。

特に、歯を抜くような場合では、歯周病や歯根破折など、すでに骨の破壊(炎症により、骨が溶けていること)が進行していることが多いと思われます。

したがって、抜歯が必要なケースにおいては、ほとんどの場合において、抜歯後に歯茎が痩せます。


 
初診時。歯根破折により、深い歯周ポケットと排膿(膿が出ること)を生じている。保存不可能であるため、抜歯となった



 
抜歯後2週間。歯茎の治癒は良好であるが、わずか2週間で歯茎はかなり萎縮してボリュームを失い、仮歯との間に隙間を生じている。審美的改善には、GBRなどの骨造成や歯肉移植などの再生療法が必須



奥歯においては、多少の歯茎の萎縮はそれほど大きな問題にはなりませんが、審美的改善が必要とされる前歯部においては、看過できない問題です。

前歯部の審美性の改善は、歯そのものの色や形はもちろん重要ですが、それにも増して歯肉との調和が重要です。

前歯部においては、いくら歯の色や形をきれいにしても、結果として歯茎との調和が得られない治療は、審美性の見地においては、失敗と言わざるを得ません。(もちろん機能的に問題が無ければ、決定的な失敗とはなりません)

現在では、多くの歯科医師が、それぐらいの覚悟をもって前歯部の治療に取り組んでいます。
 
もちろん、極度に骨や歯茎が萎縮したケースにおいては、機能的な回復を主眼において治療せざるを得ない場合もあります。

この場合には、治療前のカウンセリングの段階において、治療後に想定される審美的な問題、その対処方法などについて、細かく打ち合わせておく必要があります。

審美的問題に関しては、決して事後報告では済まされません。なぜなら、そのリカバリー(治療の修正ややり直し)は非常に難しく、治療前よりも条件が悪くなるからです。

前歯の審美的問題を、きれいなセラミック・クラウンだけでどうにかしようと安易に考えるのは、非常にリスクを伴います。

もちろん、GBRなどの骨造成や歯肉移植などは、外科手術を伴いますので、そこまではしたくないというお気持ちも理解できます。

最終的に、どこに治療のゴールを置くのかで、治療の方法や期間、費用、身体的・精神的負担などがすべて異なります。

治療結果のすべては、治療計画が鍵を握ると言えるでしょう。

是非、治療前に、担当の先生とよくご相談されることをお勧めいたします。


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