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今回は、歯列矯正の予後不良について考えます。
予後不良とは、ここでは、治療後の経過が思わしくない、あるいは明らかに失敗してしているものを指します。
一般の方が考える歯列矯正の予後不良といえば、おそらく歯列矯正後の後戻り、リラップスのことを指すと思います。
確かに、歯列矯正後の後戻りは、程度にもよりますが、予後不良の一つと言えるでしょう。
しかし、誤解を恐れずに言うと、わずかな後戻りは、決定的な予後不良とは言えません。
なぜかというと、これはリカバリーできる範疇であるからです。
では、リカバリーが難しい予後不良は何かといえば、
①歯根吸収
②噛み合わせ異常
この2つの問題は、非常にリカバリーが難しい問題です。
歯根吸収は、程度によりますが、多少であれば全く問題はありません。
歯根の2分の1~3分の2以上の重度の吸収がある場合には、ワイヤー固定か、連結補綴(つなげて被せること)による固定が必要な場合もあります。
そして、噛み合わせ異常は、最も深刻な問題です。
歯列矯正は、歯を動かすので、噛み合わせの変化は必発です。
噛み合わせは、歯の位置と顎の位置で決まります。
顎をリラックスした状態からそっと閉じ、すべての歯が均等に当たれば問題はありません。
しかし、
●どこか一か所だけ当たる
●片側が先に当たる
●前歯しか当たらない
などがある場合には、噛み合わせ異常と考えられます。
このような場合、軽度であれば、咬合調整(噛み合わせの削合)によって、噛み合わせのバランスを整えることが出来ます。
しかし、噛み合わせの大幅な修正が必要な場合には、再矯正治療、あるいは補綴治療(削って被せる)による噛み合わせの修正が必要になるかもしれません。
噛み合わせ異常も、自覚はなないけれど単によく噛んでいないものから、、顎関節症の症状を呈するもの、慢性的な肩こり、首こり、頭痛などを抱えるものまで、その症状は様々です。
現時点で、噛み合わせとこれらの症状を科学的に結び付ける確固たるエビデンス(根拠)はありません。
したがって、歯科医師も、患者さんも、歯列矯正とこれらの症状の因果関係を証明することは非常に困難です。
ただし、歯列矯正後に、このような不調を訴える方がいるのは事実です。
噛み合わせの異常は、目で見て分かりにくいので、診断を難しくしているのです。
歯科医師は、歯だけを見るのではなく、身体も心を、ミクロからマクロまで見る複眼の眼を持つ必要に迫られていると感じている今日この頃です。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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