今回は、歯髄壊死(歯の神経の壊死)による、歯茎の腫れについて書きます。

歯茎の腫れの原因は様々です。

○歯周病
○智歯周囲炎(親知らずの周りの歯茎の腫れ)
○根尖病巣(不完全な根管治療)
○虫歯や歯根のクラック、破折による歯髄壊死(歯の神経が死んでしまうこと)
○パーフォレーション(根の横に穴を開ける)
○膿疱(のうほう;袋状の病変)
○腫瘍
などが考えられます。


歯のクラックによる歯髄の壊死、歯茎の腫れにときどき遭遇します。

奥歯には、かなり大きな咬み合わせの力がかかるので、歯にひび割れ(クラック)が生じることがあります。

歯のひび割れは、咬む力で少しずつ広がっていき、ついには歯の神経が炎症を起こし、死んでしまいます。

ひび割れの初期症状は、冷たいものや温かいもので歯がしみることから始まります。
その後、咬むと痛む、何もしなくても痛むようになり、ついには歯が浮いたようになって全く咬めなくなります。


 
歯茎が腫れ、フィステル(婁孔;ろうこう:膿の出口)ができている(矢印)。歯が浮いて揺れがあり、咬むことが出来ない。歯髄電気診では、歯の神経の生活反応(生きている反応)はない。
 

 

 
根管治療後。歯に明らかなクラックラインを認める(矢印)。歯髄(歯の神経)の壊死と、歯茎の腫れの原因は、歯のひび割れ(クラック)であることが明白。歯周ポケットが存在する場合には、抜歯が適応


 
完全な根管治療により、歯茎の腫れとフィステルが消失。歯周ポケットは存在しない。経年的に、クラックが広がる可能性は残る。


歯がしみる症状が出ることは、かなり頻度の高いものです。
 
単なる知覚過敏であれば、心配はいりません。

しかし、咬むと痛むような場合には、歯のひび割れの可能性を考えなければなりません。

ひび割れの場合には、クラウンなどで補綴する(被せること)等の早急な処置を行えば、神経を取ったり、抜歯になることを回避できる場合も多くあります。

歯がしみる場合には、放置せず、きちんと検査をしていただくことをお勧めいたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。