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今回は、非抜歯矯正のための歯列拡大装置について書きます。

歯列拡大装置には、次の2つのタイプがあります。
①急速拡大装置(強い力で、上顎の骨の縫合部を拡げるタイプ。固定式)
②緩徐拡大装置(弱い力で、歯列を横に拡げるタイプ。可撤式あるいは術者可撤式)

上下の歯列(歯の並び)は、通常、下顎よりも上顎のほうが広くて大きいのが正常です。これは、歯の大きさを考えるとよく分かります。

小臼歯よりも前方にある歯は、下顎よりも上顎の歯のほうが大きく、このため、歯列(歯の並び)も上顎のほうが大きいのが普通です。

上顎の歯列が小さくなると、下顎の歯列の大きさとのバランスがとれなくなり、反対咬合や交叉咬合、叢正(乱杭歯)、下顎の後退などの歯列不正の原因となります。

このため、きれいな歯並びになるためには、上顎歯列は適度に広いほうが有利です。(広すぎても、上下の咬み合わせに不具合を生じます)

このため、非抜歯矯正は歯列拡大を前提とした矯正ということになります。

今回は、比較的応用範囲が広い緩徐拡大装置の中の一つである、床拡大装置をご紹介します。

 
拡大装置(金属の部分)が真ん中に付いており、床が左右に分かれる。

 
拡大装置。2~3日に1回、ネジ(小さく丸い穴の部分)を矢印の方向に4分の1回転(90度回転)させる

 
ネジを回す為に、金属製の器具(棒)を差し込んだところ

 
装置を拡大したところ。装置の拡大によって、歯列も横に広がる

床拡大装置の適応は、歯列が狭窄(きょうさく;横幅が狭いこと)していることが前提です。
歯列が狭窄しておらず、歯並びが悪い場合には、抜歯による歯列矯正が基本です。

誤解が無いようにお伝えすると、床拡大装置だけでは、永久歯列の場合、決して正しい歯並びにはなりません。必ず、マルチブラケットによる治療が必要です。

また、無理な非抜歯矯正は、前歯の前突(出っ歯)や開咬(オープンバイト)、歯並びの後戻りや歯肉退縮(歯茎が下がる)の原因になり、治療前よりも咬み合わせが悪くなる可能性があります。

歯列矯正は、決して楽な治療ではありません。長い期間、煩わしい装置と付き合い、難しいブラッシングや口内炎と闘い、そして何回も通院しなければなりません。

しかし、きれいな歯並びと、正しくよい咬み合わせが得られれば、歯列矯正は心身共に健康になる、非常に価値のある治療です。
みなさまには、是非、より良い矯正治療をお受けいただけることを切に願っています。

治療計画や治療の見通しについては、必ず治療前に、担当の先生と納得がいくまでご相談されることをお勧めいたします。

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