今回は、歯科インプラントのアバットメントの種類と汚れやすさについて書きます。

 インプラントのアバットメントは、インプラント・フィクスチャー(インプラント体)に中ネジ(アバットメント・スクリュー)で固定します。したがって、現在の多くのインプラント・システムは、2ピースインプラントとなっています。
 インプラント・アバットメントの上に補綴物(被せ物、人工歯)をネジ止めもしくはセメント固定しますので、インプラントを構成するのは、インプラント・フィクスチャー、アバットメント、補綴物(被せ物、人工歯)の3つのパーツに分かれています。

 この中で、インプラント・アバットメントは、歯茎を貫く部分に相当し、ブラッシングなどのメンテナンスが最も難しい部分です。インプラントのもちは、ハード面では、インプラントフィクスチャーとアバットメント・スクリューの強度、ソフト面ではアバットメント部分のメンテナンスにかかっているといっても過言ではありません。もちろん、それ以外にもたくさんの要素はあります。

 

 これは、インプラント・アバットメントをプラチナ・ゴールドでカスタムしたものです。プラチナ・ゴールドは、歯科で使う貴金属の中では、かなり生体親和性の良い材料で、値段も高価なものです。
 しかし、粘膜を貫通する部分にこれを使用すると、プラークの付着(白く見える汚れ:細菌の塊)が多く、なおかつブラッシングできないので、歯茎が炎症(赤く腫れ、出血したりする)を起こしてしまいます。金属の材質もさることながら、制作方法が鋳造(金属を溶かして作る)なので、一見きれいに見えても、顕微鏡レベルでは、おそらくかなり粗造になっていると思われます。このことが、プラークの付着を助長していると考えています。
 

ジルコニア・アバットメント。汚れが付きにくく、歯肉の反応が非常に良い。

金属に比べて審美的に優れるが、強度が劣るため、前歯部の使用に向いている。



 この点、ジルコニア・アバットメントやチタン・アバットメントのほうが、臨床的にも論文などにおいても歯茎の反応が良いことはほぼ間違いありません。

 では、なぜあえて鋳造してまでインプラント・アバットメントを汚れが付きやすいプラチナ・ゴールドで作るのか?以前は、金色のほうが歯肉のシャドー(金属色が透けて見えること)が少なく、審美上優れていると考えられたからです。
 しかし、現在、白色のジルコニア・アバットメントの出現により、この優位性はなくなってしまいました。
 また、インプラントの埋入位置や埋入深度、埋入角度が適切でない場合には、設計の自由度が高いカスタムメイドのアバットメントでないと、補綴がうまくいかないのです。

 したがって、適切にインプラントが埋入されれば、ジルコニアまたはチタンのアバットメントが使えるので、歯茎の健康上とても有利です。このようなことも、インプラント治療を行う上で、よく吟味しておく必要があろうかと思います。つまり、治療計画が非常に重要ということになりますね。

 今日も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。