今回は、医療の細分化について書きます。

 今日の医療は、診断から治療の技術、医療機器に至るまで、すべてにわたり非常に高度化され、日進月歩で目覚ましい発展を遂げてきました。以前では原因が分からず、不治の病といわれていたものも、原因が解明されたり、新薬が登場したりし、多くの病めるヒ人々が救われてきました。

 この医療の発展を担ってきた一つの要因として、医療の細分化が挙げられると思います。まだ、現在のように医療が発達していなかった紀元前では、病気は目に見えない神業(神々の仕業)の存在によるものと理解されていました。
 しかし、医学の父ヒポクラテスの出現により、医学は呪術や迷信と切り離され、目に見える現象やそれらを取り巻く環境の観察とその蓄積により、今日の医学が発展してきました。もともと、ヒトを環境をも含めた自然の全体の中で捉えることで、病気を理解していたのです。

 そして、医学の発達が進む中で、より複雑で困難な問題を解決したり、より深く研究したりすることが必要になってきました。ヒトをマクロ的な見方からミクロ的な見方へと、より狭くより深く捉えることが不可欠になってきたのです。その結果、徐々に医学は細分化され、発展を遂げてきました。

 ところが、細分化されることで弊害も生まれてきました。ヒトを臓器や疾患別で分類する縦割り的な発想が、「病気はみれども、患者をみず」というようなことを生じてきたのです。
 もともと、病気や臓器は、患者さんの一部分であって、生活する環境を含んだ全体の中の一部であるはずです。しかしながら、そのような発想は、細分化され、ミクロ的な見方が進めば進むほど欠落していきます。

 特に、現在の歯科界にあっては、このような全体像の把握が乏しく、一般的にただひたすら歯を削って詰める、歯周病になったら歯を抜くということを対症療法的にしてきました。しかし、これからは予防が重要な意味をもつ時代です。自然環境や生活習慣を見つめ、健康を創造する時代なのです。
 私も、患者さんの健康創造のお役にたてるように、日々成長していきたいと思います。

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