今日は、歯周病治療の流れについて書きます。

 

 

 歯周病の直接的な原因は、口腔内の歯周病菌の作り出す菌体外毒素であり、初期の段階では歯茎の炎症が起こり、歯茎のわずかな腫れとブラッシング時の出血を起こすようになります。

 この炎症が徐々に進行し、歯根(歯の根っこ)が植わっている歯槽骨が溶け、歯周ポケット(歯と歯茎の境目の溝)が深くなっていきます。

 

 

 深くなった歯周ポケットの中は、歯ブラシの毛先が届かず、ますます歯周病原菌が優勢になってバイオフィルム(抗菌物質や抗生剤などに耐性をもったバクテリアの塊)を形成します。

 

 

つまり、歯周病の状態は、口腔内の常在菌のバランスが崩れた状態ともいえます。腸内細菌でも同じような現象が起こることは、みなさんよく御存じのことと思います。

さらに歯周病が進行すると、歯槽骨が溶けていき歯がぐらぐらしてきて、最終的に抜けてしまいます。

 

 

 歯周病の治療は、初期の段階では適切なブラッシングの習得やスケーリング(歯石除去)だけで症状はよくなります。しかし、歯周ポケットが深くなってくると、この歯周ポケットの中の汚れや歯石(歯肉縁下歯石)をきれいにしなければなりません。

 

 

 

 

 中程度の歯周病の段階では、歯根の表面の歯石を取って滑沢にするルートプレーニングで対応します。ルートプレーニングは、歯周ポケットの中の歯根の表面についた歯石や汚れを、盲目的に手探りで取る方法です。したがって、極端に深くなった歯周ポケットの中には器具が届かず、また直接目で見えないので、歯根の表面についた歯石や汚れを完全にきれいにすることは出来ません。

 

 

 

 

 歯周ポケットが6mmを超すような重度の歯周病になってくると、歯周病の手術(フラップオペレーション・FOP)の対象になってきます。この手術では、歯根の表面についた歯石や壊死セメント質をきれいに除去して滑沢にし、歯周ポケット内の病的な歯茎(これを不良肉芽と呼びます)を取り除きます。

 

 

 最近では、再生療法が頻繁に行われるようになり、エムドゲインや人工骨などを使ったGTR法(Guided Tissue Regeneration:組織再生誘導法)も成果を上げるようになってきました。

 

 

 歯周病はサイレント・ディジーズ(静かに進行する病気)と呼ばれ、歯茎の腫れや痛み、歯の揺れなどの症状が出た時には、すでに病状が結構進んでいることが多い病気です。したがって、予防がきわめて重要な意味を持っているのです。

 

 

 適切なブラッシングの習慣化と、規則正しい生活習慣を確立することが、予防の大きな柱になります。