前回は歯列矯正の効用について書きました。

 

歯列矯正は、歯並びが美しくなり、歯のお手入れもしやすくなります。

そして、咬み合わせの不正が改善することによるメリットもあります。

 

 しかしながら、一つ、重要なことが抜けておりました。

 

それは、矯正治療後、多くの患者さんが悪かった歯並びのコンプレックスから解放されて、笑顔がすごく素敵になることです。

 

 クラウディング(乱ぐい歯)や八重歯など、傍目にみてすぐわかる歯列不正では、前歯をヒトに見せて笑うことに非常にナーバスな方が少なくありません。多くの方が控えめに笑ったり、口元を手で隠して笑ったりしていることに気づきます。

 

 でも、矯正治療を受けて歯並びがきれいになった患者さんは、ほぼ全員の方が、はじけるような素敵な笑顔をしているのです。おそらくは、コンプレックスであった歯並びがきれいになり、知らず知らずのうちに前向きな精神状態になっているのではないかと思います。もちろん、矯正治療が終わった喜びが大きいこともあるかと思いますが(笑)…

 

 笑うという行動は、実は様々な健康にプラスの効果があることが知られています。

 

例えば、笑うことで自律神経(交感神経と副交感神経)が安定するといわれています。人は、ストレスを感じると交感神経が興奮します。交感神経は、血管を収縮させ、心拍数を増やし、血糖値を上げたりします。笑うことは、この反対の作用を持つ副交感神経を興奮させることによって、気持ちをリラックスさせる効果があります。

 それだけではありません。免疫細胞の一つであるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化させ、がん細胞やウイルスに対して免疫力を高めることも知られています。また、強力な鎮静作用を持つエンドルフィンという神経伝達物質が放出され、痛みを和らげる効果も知られているのです。

 

 このように、笑うということは、私たちが考えている以上に、心と体を健やかにしてくれるのです。矯正治療がこの一助になれば、患者さんにとっても私たち歯科医師のとっても、この上のない喜びです。