抑うつ的なお年寄りに手紙を送ってあげると抑うつが良くなるか? | EBMHのブログ

EBMHのブログ

京都大学 大学院医学研究科 健康増進・行動学分野に関する研究紹介・EBM抄読会の記録など

Postcard intervention for depression in community-dwelling older adults: A randomised controlled trial. Psychiatry Research, 229, 545-550.I

地域で暮らす高齢者に対する手紙療法:ランダム化比較試験

Imai H, Furukawa TA, Okumiya K, Wada T, Fukutomi E, Sakamoto R, Fujisawa M, Ishimoto Y, Kimura Y, Chen WL, Tanaka M & Matsubayashi K (2015)

 

http://www.psy-journal.com/article/S0165-1781(15)00341-8/abstract

 

なにがわかったの?

高齢者のうつ病は慢性化することが多く問題ですが、地域でできるような時間と人手のかからない効果のある介入というのはまだありません。この研究では、実際にできそうで有効な方法を見つけるために、地域で暮らす高齢者のうち抑うつ状態にある人を2群に分けて、片方に研究者が手書きの手紙を月に1回送りました。その結果、8か月後に手紙を受け取った群とそうでなかった群ではうつ状態について差はみられませんでした。ただ、手紙群の人で質問に答えてくれた人の多くからは「手紙は効果があった」と答えました。期待した効果は実証できませんでしたが、手紙には何らかの効果があるのかもしれません。

 

もっと詳しく・・・

この研究では高知県の地域で暮らす高齢者のうち、よくうつ症状があり普段一人で食事をとっている184人をランダムに2群に分け、手紙療法群には研究者が手紙(一枚は手書き、もう一枚は印刷した季節のおたより)を送りました。8か月後の調査ではうつ症状や他の尺度では両群(手紙療法とコントロール)で有意な差は認めませんでした。手紙を8回すべて受け取った人(41人)のうち、質問に答えてくれた24人では20人が「手紙は有効だった」と答えました。地域の高齢者に対する手紙療法はうつ症状の改善には有効ではありませんでしたが、違う尺度を用いれば効果が測定できた可能性は残りました。

 

臨床医へのメッセージ

地域で暮らす抑うつ的な高齢者に手紙を送るだけでは、うつ症状の改善は得られないだろう。

 

【掲載には著者の許可を頂いています】