11月4日。大統領選翌日の早朝、CNNでミシガン州とウィスコンシン州がピンク(トランプリード)から水色(バイデンリード)に変わっているのを見た瞬間、涙が出てきた。良かった。トランプ政権が終わる。そう感じた。

 

選挙当日の火曜日の夕方、アメリカの地図がどんどん赤とピンクに染まっていった。どうしても2016年の選挙と重ねて見てしまう。「これは本当にトランプが再選してしまうのでは」とイライラせずにはいられなかった。向かいの家も、その隣も、みんな静かに選挙結果をテレビで見ているのが窓越しに見える。

 

*上記の写真は西海岸時間、11月3日(火)の午後8時半での時点

 

CNNのリポーター達は、「バイデンが当選するチャンスは現時点で何通りもある」と冷静に解説していたが、真夜中になっても、1時になっても赤とピンク優勢のまま。一旦テレビでを消して寝ようとしたが、「もしあと4年間もトランプが大統領のままだとどうなるのだろうか。実は今とそれほど変わらないのかもしれない。でもあと4年。。。」そう考えるだけで恐怖で眠れなかった。

 

日本にはバイデン嫌い、=トランプ支持の人が多いなと、今回の選挙を通して感じた。日本でも極端に民主党とバイデンに対して偏見を持っている人達、トランプを崇拝している人達がいるのには少し驚いたが、色々な考えの人がいるのは当然。

 

私は心の底から民主党を支持している訳ではないし、バイデンがベストの選択肢だと思っている訳でもない。むしろ"Settle for Biden”(とりあえずバイデンで落ち着こう)の意見に賛成。トランプ率いるこの国で4年間過ごすよりは、バイデン率いるアメリカで暮らしたい。私が住んでいるサンフランシスコベイエリアはアメリカの中でも特にリベラルな土地なので、トランプ支持者と会うことも話す機会もほとんどない。FacebookやInstagram、Twitterでも友人・知り合いのほとんどはオープンにトランプを批判し、バイデンを支持している。ただ、これとは全く逆の立場から今回の選挙を見ている人達が大勢いることも十分理解している。

 

ベイエリアで暮らす私の感覚では、バイデンが勝って当然の選挙だった。だからトランプが「この選挙は民主党に盗まれた!不正だ!」と言っているのは正直コメディにしか見えない。でも、違う立場にいる人達は、もちろん本気で憤慨している。その人達からすれば、コメディだと言っている私は、愚かで呑気な人間に見えるだろう。

 

でも、もしそれほど大規模な不正が多くの場所で行われていたのなら、たくさんの内部告発が起こり、色々な証拠がすぐに出てくるはず。そもそも、そんな風に選挙を操ることが可能ならば、その他の共和党候補者の当選を妨げることだって出来たはず。大規模な不正集計と言うには、あまりにも矛盾点が多すぎると思う。

 

私はトランプの政策や考えを全て否定している訳ではない。ではなぜ涙が出るほどトランプが再選しないことを望んでいたのか。自分の意見や価値観に合わない人間を「悪」として、とことん非難し、責め立て、逆に自分の価値観に合う人間や支援者を「善」として褒めちぎる。国のリーダーとして、私にはどうしてもそれが許せない。それが彼を支持できない大きな理由の一つ。
 
フットボールフィールドで人種差別と警察の某力に対して静かに抗議するアスリートを「ろくでなし(son of a bitch)」と呼び、自分と意見の異なるマイノリティの女性議員達には「祖国へ戻れ」と言い、Black Lives Matterのデモ隊は全てひっくるめて「テロリスト」と呼んだりする。逆に、テキサスで選挙キャンペーン中のバイデンのバスを何台ものSUVで囲んで脅したトランプサポーター達を「愛国者だ」と呼んで褒める。こうして彼は、自ら率先して分裂の溝を深めてきた。
 
多くの人がトランプを英雄だと称え、逆に国の半分は彼のやり方に憤りを感じている。これほど真っ二つに国が分断されているのはトランプだけが原因ではなく、もともとこの国にたくさんの問題が存在していたから。だからこそ、「トランプ大統領」が誕生したのだろう。ただ、彼が大統領となって4年経った今、トランプがこの国のトップとしてふさわしいとはどうしても思えない。