4ヶ月以上中断していたNBAが、*オーランドのNBAバブルの中で再開した。

 

*NBAバブル=NBAシーズンを中断した3月時点でプレイオフに進める可能性のあった22チームがフロリダのディズニーワールドの会場・ホテルの閉鎖された空間の中に数ヶ月閉じこもってゲーム・練習をしている。

 

 

コートには"Black Lives Matter"と書かれ、国歌斉唱(関係者以外は中に入れないので全て録音)の際にはほとんど全ての選手やコーチが"Black Lives Matter"のTシャツを着て、片ひざをついた。

 

 

その中で、地元オーランド・マジックの選手、Jonathan Isaac(ジョナサン・アイザック)はBLMのTシャツを着ず、一人起立していた。

 

 

4年前、国旗掲揚・国歌斉唱中に誰もが当たり前のように起立する中で、最初に片ひざをついたキャパニックの意志と勇気は相当なものだったが、周りのチームメート全てが同じTシャツを着て片ひざをつく中で、一人起立する勇気も相当だっただろう。アイザックは、Black Lives Matterに反対している訳でも、チームメートの行動に反対している訳でもなければ、人種差別を肯定している訳でもない。

 

 

それぞれの意思表示ができるということは、とても重要なことだと思う。白人至上主義や人種差別をサポートしていたとしたらそれは別の問題だが、全て周りや世の中の流れに合わせる必要はないし、意思表示の方法に賛同する人もしない人もお互いの意見を聞きあって、それぞれを尊重すべきだと思う。

 

 

アイザック選手がBLMのTシャツを着ず、ひざをつかなかったことに対して、以下のように語った。(CBS Sportsの記事から。)

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"I believe that Black Lives Matter. A lot went into my decision, and part of it is, I thought that kneeling or wearing the Black Lives Matter t-shirt doesn't go hand-in-hand with supporting Black lives. So I felt like, just me personally, what is that I believe is taking on a stance that, I do believe that Black lives matter, but I just felt like it was a decision that I had to make, and I didn't feel like putting that shirt on and kneeling went hand in hand with supporting Black lives. I believe that for myself, my life has been supported by gospel, Jesus Christ, and everyone is made in the image of God and that we all forge through God's glory. 

Each and every one of us do things that we shouldn't do and say things that we shouldn't say. We hate and dislike things that we shouldn't hate and dislike, and sometimes it gets to a point where we point fingers, whose evil is worse, and sometimes it comes down to whose evil is most visible. So I felt like I wanted to take a stand on, we all make mistakes, but I think that the gospel of Jesus Christ is that there's grace for us, and that Jesus came and died for our sins and that if we all come to an understanding of that and that God wants to have a relationship with us, that we can get kept all of the things in our world that our messed up, jacked up. 

I think when you look around, racism isn't the only thing that plagues our society, that plagues our nation, that plagues our world, and I think coming together on that message that we want to get past not only racism but everything that plagues as us as a society, I feel like the answer to that is gospel."

「黒人の命は尊重されるべきだと思います。この決断に至るまで色々考えましたが、僕はBlack Lives MatterのTシャツを着ることや、ひざをつくことが黒人の命を大切にすることに直接繋がっているとは思えないのです。黒人の命が尊重されるべきだと信じているけれど、ただ個人的に、*他の選手と同様の意思表示の方法を選ばなかったのです(*意訳)。僕自身、また僕の命はゴスペルとジーザスに守られてきたと思っているし、全ての人は神によって作られ、人は皆神のご加護のもと生きていると信じています。

 

私たちは皆、間違った行動をとったり、言うべきではない発言をしたりします。嫌うべきではないことを嫌ったり、嫌がったり、時には誰がより悪質であるか相手を非難したり、『どの悪が一番あからさま(に見える)か』が問題になったりします。誰もが間違ったことをするけれど、私たちは皆神の恩恵を受けていて、神は私たちの罪のためにこの世に来て、亡くなりました。だからこそ、私たちは世の中の問題を解決していけるのです。

 

周りを見渡すとこの社会、国、世界には人種差別だけでなく色々な問題が存在し、全ての問題を解決する答えはゴスペルにあると思っています。」

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私は彼の意見に賛成ではないけれど、彼の言いたいことは分かるし、プレッシャーの中で自分の意志を貫いたことはすごいと思う。同時に、BLMのTシャツを着て、様々な思いを胸にひざまずく選手達を見るとやっぱり胸が熱くなる。

 

キング牧師のメッセージも根本はアイザック選手と同じ。「問題を解決するのは暴力でも暴動でもなく、愛である」ということ。ただ、キング牧師は間違っていることに対して平和な手段で抗議することの大切さを訴え続けていた。アイザック選手のアプローチは、聖書に従って互いを許すことが問題の解決につながるということ。でもその教えのもと、何百年にも渡って肌の色違いで差別を受け続けて、それに抗議をする事さえ許されなかった歴史があることを忘れてはいけないし、宗教が直接的に人種問題を解決しないことも理解しなくてはいけない、というのが私の意見。