通勤ラッシュの時間帯、普段は混雑している駅が空っぽになり始めた今年3月上旬。

 

 

自宅から最寄りの駅まで車で3分、オフィスがあるサンフランシスコのダウンタウンまで電車で30分、駅からオフィスまで徒歩7分。この通勤が毎日かなりのストレスだった。

 

 

コロナの影響によりオフィスを完全に閉鎖して、社員全員リモート勤務に切り替えたのが3月10日。その1週間後に、サンフランシスコ・ベイエリアではShelter in place(外出禁止令)が出た。それから4ヶ月半。最初は要領がつかめず苦戦したものの、今は特に何の問題もなくリモートで仕事をしている。むしろ、今となっては毎日あの通勤に使っていた時間とストレスは何だったのかと思ってしまう。

 

 

リモートで働くと、実際に会って仕事をするより効率が悪いことも多いし、家で働くことで勤務時間が長くなる(オンとオフの切り替えが難しい)傾向にあるものの、あの通勤地獄に戻りたいとは全く思わない。むしろ毎日の通勤を想像するだけでゾッとする。それは会社で働くほとんどの人が感じていることで、私の会社ではひとまず今年いっぱいはオフィスを閉鎖したまま、来年以降コロナの状況が改善されていれば週2日程度のオフィス勤務に切り替えるという方向で話が進んでいる。

 

 

コロナ前の私の一日。

朝5時半に起床、コーヒー片手にニュースを見ながらメイク・身支度。6時半に子供達を起こして朝食を食べさせながら長女のランチボックスの準備。子供達の着替えを済ませてそれぞれデイケア・学校まで送り届けて、駅の駐車場に着くのは8時過ぎ。車を停めて駅までダッシュ。朝5時半に起きても、仕事を開始できるのは9時過ぎ。

 

 

私はどんなに疲れていても、絶対に電車の座席に座らないと決めている。とにかく電車が汚い。だから吊り革にも手すりにも触らないようにしている。電車の中で油断していると携帯を盗まれるということも日常茶飯事。それから、電車の座席でドラッグをしている人達もしょっちゅう見かける。毎朝(犯罪率の高い)オークランドや周辺のエリアを通り過ぎる。電車の窓からボロボロの家や工場、落書きだらけの壁、ゴミの山、ギッシリと並んだホームレスのテントを眺めながら、毎日色々なことを思う。

↑ウェストオークランド駅からの光景。

 

電車の中も、駅も、サンフランシスコの街の中も、ものすごい数のホームレスの人々で溢れている。人種も、年齢も様々だが、やはりマイノリティが多い。中には赤ちゃんや小さな子供を連れた女性のホームレスもたくさんいる。私は、小さな子連れの女性のホームレスを見たときだけ、$5から$10渡すようにしている。一日分の食料の確保も出来ない額だけど、少しでも足しになればと。。。駅からオフィスまで、たった7分の距離の中で、たくさんのホームレスとすれ違い、その度にお金をくれと言われる。でもキリがないので無視して進む。周りの人達も同じように無視して、それぞれの職場へ向かう。道の真ん中で寝ている人達(おそらくドラッグで)を避けつつ、足速に通り過ぎる人々。

 

 

格差社会。

 

 

物価や家賃の高さは全米で1位2位を争うサンフランシスコ・ベイエリア。物価が高騰して、裕福層が増えれば増えるほど、ホームレスの数も増える。

↑一泊$1,000近くするホテルの向かいには(ドラッグの)注射器。電車の座席にも注射器。

 

↑でも、駅と直結しているモールの中はいつもキラキラしている。

 

 

仕事を終えて、駅の駐車場に戻ってまず確認するのは、自分の車が車上荒らしにあっていないかどうか。実際、毎日のように誰かの車の窓ガラスが割られている。警察が常駐している駅の、有料の駐車場で、私の車も窓ガラスを割られて荒らされたことがある。

 

 

現在この地域のテック系企業で働く人達の多くがリモートワークを続けている。大量にレイオフを行った会社や業界ももちろんあるが、多くの会社では通常通り積極的な採用活動を続けていて、レイオフされた数週間後に何社からも仕事のオファーをもらうエンジニアがたくさんいる。

 

 

外出禁止令から数週間後、空っぽになった街の中でメディアがホームレスに取材を行ったところ、ほとんどの人はコロナについて知らなかったということがニュースになっていた。ホームレスコミュニティ内での集団感染を防ぐため、サンフランシスコやその他の都市ではホテルやモーテルなどを一時的にホームレスシェルターにしたり、急遽大きな空き地や駐車場にホームレス用テントを張ったりという措置が取られたが、間に合ってないらしい。

相変わらず近所の公園でもほとんど人とすれ違う事はない。数ヶ月以上続く非日常の中で、大人も子供も通常とは違うストレスと闘っている。

 

 

私が毎日の通勤ですれ違ってきた大量のホームレスの人々は今頃どうしているのだろう。

 

 

私自身、自分の仕事と子供達の世話でいっぱいいっぱい。そんな中、ホームレスコミュニティや低所得コミュニティのために食料品を配るボランティアをしている人達が大勢いることも事実。そういう人達には本当に頭が上がらない。