何とも複雑なIndependence Day(独立記念日)だった。

 

 

普段なら各地でイベントやフェアがあって、夜には花火。家では友達や家族と集まって、ワイワイとバーベキューをしたり、国全体が「おめでとう」モードになる独立記念日。でも今年はコロナの影響でイベントはほぼ全て中止、なるべく家から出ないようにと呼びかけもあって、全体的にすごく静かだった。

 

 

コロナの犠牲者の数(現時点でアメリカでの死者13.2万人)と、まだコロナの収束のめどが全く立っていないこと、それに加えて人種差別の問題、警察問題などが重なって"Happy 4th!"(「独立記念日おめでとう!」)的な雰囲気ほぼ無し。我が家も、今年はRed, white, blue(国旗の色)を着るのはやめようと、普段着で近所の公園まで散歩、家で焼肉、家の中から外の花火鑑賞。この地域では個人で打ち上げ花火を上げるのは禁止だけど、みんな上げている。。。

 

 

↓パンデミック中遊べないように、ブロックされているRim(リング)でバスケをする娘達。

 

そもそも、私は独立記念日という華々しい祝日に対して、今まで特に疑問を持ったことがなかった。単純に、「自由を尊び、アメリカの独立を祝い、それを実現した人達を讃える日」くらいにしか思っていなかった。でも歴史と歴史的な祝日は、「誰が主人公になるか」で、ストーリーも受け止め方も全く変わってくる。そのことを考えさせられたのが下記のフレデリック・ダグラスのスピーチ。

 

 

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"What to the Slave is the Fourth of July" – 奴隷にとっての独立記念日

 

1852年7月、170年近く前にフレデリック・ダグラスが行なった独立記念日のスピーチを、ダグラスの子孫達が朗読した動画がYoutubeに出て話題になった。

 

 

以下、スピーチの一部。

 

"This is 4th of July. It is the birthday of your National independence and of your political freedom. "

 

7月4日です。国家の独立と、あなたの政治的自由の誕生日です。

 

"Are the great principles of political freedom and of natural justice empodies in that Declaration of Independence, extended to us? I am not included within the pale of this glorious anniversary. "

 

独立宣言に記された素晴らしい政治的自由の原則や正義は私たちにも当てはまるのでしょうか?この漠然とした、輝かしい記念日に、私は含まれていません。

 

"What, to the American slave, is your Fourth of July? I answer: a day that reveals to him, more than all other days in the year, the gross injustice and cruelty to which he is the constant victim. To him, your celebration is a sham; your boasted liberty, an unholy license; your national greatness, swelling vanity; your sounds of rejoicing are empty and heartless; your denunciations of tyrants, brass fronted impudence; your shouts of liberty and equality, hollow mockery; your prayers and hymns, your sermons and thanksgivings, with all your religious parade, and solemnity, are, to him, mere bombast, fraud, deception, impiety, and hypocrisy."

 

アメリカの奴隷にとって、7月4日(独立記念日)とは何か?答えましょう。一年の中で他のどの日よりも、自分自身がひどい不正と残酷さの被害者であると思い知らされる日。彼にとって、あなたのお祝いは偽りです。あなたの誇りである自由、不道徳な手段、偉大な国、ひどい虚栄心、あなたの祝福の音は空っぽで残酷だ。あなたの君主への非難、ずうずうしさ、自由と平等の叫び、うわべだけの高笑い、祈りと賛美、説教と感謝、宗教的なパレードや儀式、それら全ては彼(奴隷)にとって、ただ表面的な言葉で、詐欺で、ごまかしで、不心身で偽善でしかない。

 

 

たいていの祝日がそうであるように、独立記念日にも歴史的バックグランドと文化的バックグランドがある。文化的背景から考えると、この日は自由と独立を祝い、愛国心を育てて、家族や友達とバーベキューやイベントを楽しむ日。それはそれで良い。ただ歴史的背景を考えると、単純にこの日が「1776年にアメリカが独立した日」というストーリーだけでは不十分で、本来は、国の独立後もなお自由と独立を与えられなかった人々がこの国にたくさんいたのだということをセットで理解する必要があるのだと思う。

 

 

私自身この静かな独立記念日に、改めて独立記念日について学ぶ機会となった。そして来年以降の独立記念日のたびに、ダグラスのスピーチを思い出すことになりそう。