大きなニュースにもならないまま、人種差別と警察の犠牲となった人達の話が、どんどん表に出てくる。

 


コロラド州オーロラでマッサージ師として働いていた23歳の黒人男性、Elijah McClain(イライジャ・マクレイン)は、近所のガソリンスタンドでお茶を買って歩いて帰宅する途中に警察に呼び止められて、そのまま帰らぬ人となった。2019年8月のことだった。

 


イライジャは極度の貧血症だったため、普段から体を冷やさないようにスキー用のマスクをして外出することが多かった。事件当日、警察に「マスクをした不審な黒人が、手を振りながら歩いている」と通報があった。イライジャはただ、購入したお茶を持って、音楽を聴きながら家に向かって歩いていただけ。
 

 

ただ歩いていただけのイライジャは、パトカーから警察官に呼び止められ、その場で止まるよう指示される。イライジャは冷静に「僕には歩く権利がある」と返事をした。だが、すごい剣幕で怒る警察官を見て、彼は指示に従った。「お前は怪しいから逮捕する」と言われ、3人の警察官に押さえつけられ、無理やり手錠をかけられる。イライジャは、「何もしていないのになぜ逮捕されるんだ?」と必死に抵抗した。彼が必死に訴えれば訴えるほど、警察官達は暴力的になり、首を締め付け、押さえつけた。イライジャは泣きながら「息ができない。僕は何も悪いことをしていないし、誰も傷つけたりしない。僕にはハエ一匹さえ殺すことだってできないんだ。ただ家に帰りたいだけなんだ。ごめんなさい、どうか許して。僕はただちょっと人と違うだけなんだ。ごめんなさい」と叫び続けた。

 


実際イライジャは、仕事の休憩時間に職場近くの動物シェルターに出向き、飼い主のいない猫達を癒すためにバイオリンを弾くような人物だった。

 


取り乱すイライジャを警察官達は無理やり押さえつけ、この男は薬をやっているに違いないと決めつけた。そして現場に駆けつけた救急隊員によって、ケタミン(麻酔薬の一種)が注射された。イライジャはそのまま昏睡状態に陥り、6日後に病院で息を引き取った。

 

 

警察のカメラにこの一部始終が記録されていたが、警察官達が罪に問われることはなかった。

 

 

イライジャはなぜ逮捕されて、なぜ死ななくてはいけなかったのか。マスクをして歩いていたことが罪?そんな法律、どこにある?歩いていて、突然逮捕されることに抵抗するのが罪?泣きじゃくったら罪?そして、ただ歩いていただけの人を無理やり逮捕して暴力を振るう警察官達に罪はない?

 

 

イライジャは「家に帰りたい」という、そんな当然の権利さえも奪われてしまった。買ったお茶を飲むことも出来ずにこの世を去ってしまった。検視解剖の結果、警察官達の行動が死因となった証拠が見つからなかったという。

 

 

狂ってる。

 

 

Black Lives Matterの運動が全米規模になったことにより、イライジャの事件が再びニュースに出てくるようになり、彼を「殺害」した警察官達を罪に問うように訴える声が広がった。イライジャの死から10ヶ月経って、ようやくイライジャの家族の声が人々に届いたが、まだこの戦いは始まったばかり。

 

 

↓イライジャの家族への募金(クラウドファンディング)のページ
https://www.gofundme.com/f/elijah-mcclain

 

 

 

↓イライジャの事件の再調査を求める署名。(3週間で250万人以上の署名が集まっている)

https://www.change.org/p/adams-county-district-attorney-justice-for-elijah-mcclain-2

 

 

 

R&BシンガーのAlicia Keys(アリシア・キーズ)が、先週新しい曲を出した。タイトルは"Perfect Way To Die"(完璧な死に方)。Black Lives Matter運動と、警察の問題を受けてアリシアが作った曲。

 

 
Simple walk to the corner store
Mama never thought she would be getting a call from the coroner
Said her son's been gunned down, been gunned down
"Can you come now?"
Tears in her eyes, "Can you calm down?"
"Please, ma'am, can you calm down?"
 
ただ近所のお店に出かけただけ
ママはまさか検視官からの電話が来るなんて、想像もしていなかった
あなたの息子さんは撃ち殺されました、撃ち殺されました
「すぐに来れますか?」
目に涙をためる彼女に、「落ち着いてください。」
「奥さん、どうか落ち着いてください。」
 
But it rained fire in the city that day
They say
A river of blood in the streets
No love in the streets
And then came silence in the city that day
They say
Just another one gone
And they tell her, "Move on"
 
でもその日、街には火の雨が降った
人々は言う
道路には川のように血が流れている
ここには愛などない
そして街は静かになった
人々は言う
また犠牲者が出てしまった
そして人々は彼女に、「諦めよう」と言う
 
And she's stuck there singing
Baby, don't you close your eyes
This could be our final time
And you know I'm horrible at saying goodbye
And I think of all you could've done
At least you'll stay forever young
I guess you've picked the perfect way to die
Ooh, I guess you picked the perfect way to die

 

彼女はその場にうずくまり歌う

ベイビー、どうか目を閉じないで

これが最後かもしれない

私はさよならを言うのが本当に苦手なの

そして、あなたに他にどんな選択肢があったのかを考える

少なくとも、あなたは若いまま

永遠に歳をとらない

きっとあなたは、完璧な死に方を選んだのね

そうね、完璧な死に方を選んだのね