悲しいニュースや話題が続く中で、昨日(6月15日)は朝からとてもポジティブなニュース。

 

 

アメリカの最高裁が、Title VII of the Civil Rights Act of 1964(1964年公民権法第7編=通称「タイトルセブン」)の下で、雇用におけるLGBTQの権利も守られるという定義付けをしたから。

 

 

具体的にどういうことなのか?


 

タイトルセブンは、人種、肌の色、出身国、性別、宗教による公民権(選挙権など含む)と雇用における人種差別を禁ずる法律。ちなみに、障がいを持つ人への差別に関しては、タイトルセブンではなくADA(Americans with Disabilities Act of 1990)で守られている。

 

 

Sexual Minority(性的マイノリティ)の総称は、少し前まではLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)が多く使われていたが、最近ではLGBTQ(Questioning =自分の性的アイデンティティに疑問を感じている場合など)、Qを含む表記が圧倒的に多い。「LGBTQであることを理由に採用されないとか、解雇されるなんてことあり得るの??」という意見があるかもしれないが、それは見えない、または気付いていないだけ。セクシャルマイノリティに対する偏見と差別は凄まじい。保守的な地域や会社になればなるほど。今まではLGBTQがタイトルセブンで守られていなかったため、それを理由に職場で不当な扱いを受けたり、解雇されても、泣き寝入りした人達が大勢いたのだ。カリフォルニアなど、州によってはすでに性的マイノリティの権利が守られていたが、国レベルではなかったので、今回の決定はとても重要なこと。

 

 

米軍では、2011年まで"Don't ask, don't tell" という方針があった。文字通りゲイ、レズビアン、バイセクシュアルであることを「聞くな、話すな」ということで、軍の中で自分がゲイやレズビアンであることを明かしてはいけないというルール。性的マイノリティを理由とした軍内での差別や混乱を回避することが目的だったが、逆にそれを明かしてしまうと軍にはいられない決まりだった。現在は無くなったが、こんな規定が9年前まで存在していた。”Don’t ask, don’t tell”が確立する以前は、ゲイの入隊自体を禁じていた。

 

 

雇用におけるLGBTQへの差別というのは一般的に理解されていない部分がとても多い。人種差別と同じで、差別される側にならないと見えないことがたくさんあるから。例えばLGBTQ以外の人は、職場に女子トイレ、男子トイレしかないことに何の疑問も持たないし、それが不便だとも思わない。でも、心と体の性が一致していない人にとってはどうだろうか。「男性」として生まれたけど、心の性が「女性」だったら、その人は職場で他の同僚と一緒に男子トイレを使うことが毎日毎日苦痛でならない。でもそれを誰に相談すれば良いのかも分からない。相談したら、周りから偏見の目を向けられるのではないか、職場の人間関係が崩れてしまうのではないか、そんな恐怖と戦っている人達が本当はたくさんいる。周りの人達は、何の疑問も持たずに、自分のことを「She」と呼ぶ。でも本当は、「He」と呼んで欲しい。何度も何度も「He」と呼んでね、とお願いしても、すぐに忘れられてしまうので、また「Sheではなく、He」ね、と直す。そんなやり取りを何度も繰り返し相談するうちに、「働きにくい人。」と判断されてしまい、仕事も人間関係も上手くいかなくなる。こんな話が、本当はたくさん隠れている。採用者や面接官の偏見から、面接で落とされてしまう人達だっている。

 

 

何年か前に、私が小さなスタートアップ(ベンチャー企業)で働いていた時のこと。電話面接をした相手から、最後に"How does your company treat LGBTQ people?"(御社では性的マイノリティの人達にどのように接していますか?)という質問をされたことがある。初めて聞かれた質問で、すぐに良い回答が見つからなかった。とっさに、"Oh, we are very open, inclusive and we value diversity"(私たちはオープンで、それぞれの違いを受け入れて大切にしています)と、ありきたりな回答をしてしまった。その職場にはLGBTQの社員が何人もいて、私の上司もゲイだったので、こういう質問にどう答えるべきか話し合った。

 

 

LGBTQに対する偏見や差別との戦いは子供の頃から始まっていることも多い。私の娘は私立の小学校に行っていて、普段は男の子、女の子それぞれ別の制服を着ている。でも夏休みの間(サマースクール)だけは私服。去年、その学校のサマースクールに参加していた男の子と娘が意気投合し、仲良しになった。仮に「ライアン君」とする。ライアンは普段は別の小学校に通っている。サマースクールが終わりに近づいた頃、娘は毎日のように「ライアンのお家に遊びに行きたい。ライアンのお父さんも遊びに来てって言ってるよ」と言うので、私はライアンの両親に「娘がライアンと遊びたがっているので、良かったらプレイデートをしましょう」と娘経由でメモを渡した。するとすぐにライアンのお父さんからメッセージが来て、その週の金曜日の夜に家族でライアンの家に遊びに行くことになった。ちょっとしたフルーツや手土産を用意していたら、娘が「あ、ライアンは私のドレスを着てみたいかもしれないから何着か持っていく!」と。私には意味が分からなかったのだが、初めて会ったライアンは可愛いドレスを着て私たちを出迎えてくれた。「あー、そうだったのね!」と納得。ライアンは見た目は男の子だけど、部屋はプリンセスとユニコーンだらけ。娘と楽しそうに遊んでいた。で、ライアンのお母さんから、「本当は同じ私立の学校に行かせたいけど、ライアンは男の子の制服を着るのがどうしても嫌だから。。。」という話を聞いた。ライアンの両親は、6歳の子供の興味と意思をちゃんと理解し、尊重していた。

 
 
まだまだ長い道のりだけど、誰もが自分らしく暮らせる世の中になりますように。私も日々勉強。