アメリカで人事の仕事をしていると、人種問題が様々な場面で登場する。色々なトピックがある中で、今回はUnconcious Bias(アンコンシャス・バイアス=無意識の偏見)について。

 

アンコンシャス・バイアスは文字通り、無意識の偏見。実はこれが、採用やその他の人事において、大きな影響力を持っている。それによって、プロの人事担当者でも無意識のうちに差別的な決定をしてしまっていることが多々ある。

 

例えば、人は採用の場で自分と似たようなバックグランドを持つ人、自分と共通点がある人を好む傾向がある(Affinity bias =アフィニティ偏見)。数多くの候補者の中に、自分(や自分の家族)と同じ地元&大学出身や、人種グループ、その他何か共通点を持った人を見つけると、親近感が増して、知らず知らずのうちにその候補者をひいきしてしまう。

 

反対に、個人的に好まない服装、髪型、名前や出身地を目にした瞬間に、候補者を選考から外してしまうことがある(Horns Effect)。例えば、「昔○○出身の人のと仕事をしたが、全く上手くいかなかった。○○出身の人とはどうしても合わない。」という偏見を、採用現場に持ち込んでしまうことがある。

 

アンコンシャス・バイアスは、知らず知らずのうちに人種差別に繋がっていることもある。出身地や、自分との類似点、個人的な好き嫌いに左右されてしまい、職場に同じ人種ばかりが集まってしまうことが実はよくある。逆に言うと、出身地や出身校、採用側との共通点が無かったがために、その仕事をするための能力とスキルがあるにも関わらず、他の人が選ばれてしまい不採用となることもあり得るのだ。それらが積み重なると、最終的に一部の人種にとって不利な結果となる可能性がある。

 

 

重要なのは、私たち誰もがアンコンシャス・バイアスを持っていることを自覚し、それを人事や採用決定の際に意図的に切り捨てること。また、採用決定に関わる人たちにアンコンシャス・バイアスのトレーニングを行うこと。

 

 

ちなみに、アメリカでHR(Human Resources =人事、最近ではPeopleとかPeople Operationsと呼ぶ会社も多い)のセミナーやカンファレンスに行くと、圧倒的に白人が多い。でもこれだけではデータの裏付けがないので、調べてみた。Data USAの情報によると、HR職全体では白人が73.2%(人事の管理職では77.3%)、黒人が12.1%(管理職では9.68%)、アジア人は6.18%(管理職は6.05%)。このデータには政府、軍、教育機関やあらゆる民間企業が含まれているので、民間企業のみとか、テックのみのデータを出すと、もっと偏った結果になりそう。

 

 

*写真は2019年のLinkedIn主催のカンファレンス。ゲストスピーカーはミシェル・オバマ。