すんごく久々の更新となりました。
少し古いのですが、週刊ダイヤモンド7月21日号で不妊治療を特集しています。既に読まれている人も多いと思います。今回は、その感想を書きます。
記事ですが、要は不妊治療について現状や、特に男性のサポートが必要等のことが書いてあるのですが、、、
特筆すべきは、全国の不妊治療病院610施設にアンケートをとり、その回答があった
136機関について、不妊治療実績や費用等を掲載していることです。
(そのため、以下のデータ等は、回答のあった136機関のデータです)
記載されているデータ項目がバラバラであったり、そもそも都内で治療数上位の5病院については実績が見つけられなかったなどを書きました。
今回のダイヤモンドの記事では、データ項目が一応統一されており、さらにこれまで見られなかった都内のトップ病院についてもデータが出ており、大変参考になります。
(そのデータについては、ダイヤモンドを読むのが一番ですが、手元にない場合は、「不妊治療 病院 実績 一覧 ダイヤモンド」などで検索かければ、個人のブログで一部の地域(及び治療数が一定数以上)の病院限定ですが、具体のデータを分析しているHPがありますので、探してみてください。)
具体的に見ていった感想ですが・・・
1 妊娠率5割以上の病院は少ない
比較的妊娠し易いとされる、凍結胚移植について、平成27年の一年間の実績でみると、その妊娠率(妊娠数/凍結胚移植回数)が5割を超えている病院は、全国で10病院しかありませんでした。(以下、妊娠率と書いてあるものは、全て、この妊娠数/凍結胚移植のことを指します。ダイヤモンドの記事では、このほか、人工受精の妊娠率等もありますが、ここでは最も妊娠率が高い、凍結胚移植についてのみ書きます。
5割を越えていたのは関東では、東京の日本医科大病院(妊娠数52回/移植84回。61.9%)と神奈川の新百合ヶ丘総合病院(同133回/223回。59.6%)だけでした。
新百合ヶ丘総合病院は卵巣手術等で高い評価を得ている病院です。
5割を超えていた10病院の平均データを取ると、一年間の凍結胚移植の平均回数が389回、妊娠数は263人で、妊娠率65.3%となりました。
妊娠率が6割を超えている病院が7つあり、そのうち3つは7割を超えていました。
2胚培養士と妊娠率との関係
胚培養士の数と妊娠率には関係がなさそうです。肺培養士が多ければ、それだけ多くの患者を受け入れられるということにはなると思いますが、治療成績とは関係ないようです。胚培養士一人当たりの治療数が多いほど妊娠率が高まるのであれば、経験がものを言うとも言えますが、そのような数字を見出せませんでした。
一方、妊娠率5割以上の10病院における胚培養士一人当たりの移植実施回数は64.3回
でしたが、胚移植を平成27年に1000件以上実施した11病院における胚培養士一人あた
りの移植実施回数は135.0回と倍以上の差が見られました。
そして、胚移植を1000件以上実施した11病院の妊娠率は34.5%と、妊娠率5割以上の病院の平均65.3%の半分程度の数字となっています。
ひょっとすると、移植回数が多い病院では、胚培養士が足りていないため、妊娠率が
低いのかもしれません。あるいは、妊娠率が高い病院は、胚培養士当たりの移植回数が少ないので、丁寧な仕事をしているために妊娠率が高い可能性もあります。
ただし、今回集計したのは、妊娠率5割以上の10病院と、移植回数1000回以上の11病院だけなので、ダイヤモンドに掲載されていた残り112病院を分析しなければ、データの意味が見えてきません。
5割以上10病院の平均胚移植回数は389.4回、1000回以上11病院の平均は2864.6回と7倍の差がみられます。
今回分析していない病院をみると、胚培養士一人当たりの移植回数は、妊娠率ではなく、単に病院の移植回数と相関しているだけかもしれません。
あと、5割以上10病院の胚培養士の人数をみると、1人、2人、3人、4人、5人、6人、7人、7人、9人、13人となっており、胚培養士が少ないからといって、妊娠率が悪いということもなさそうです。(平均は5.7人。なお、1000件以上11病院の平均は21.5人でした。)
3着床前診断はやはり凄い
今回、妊娠率TOPだったのは、神戸ART(旧大谷CL)でした(699回/940回。妊娠率74.36%。)。やはり着床前診断の結果なのだろうと思います。
着床前診断は一般に流産率低下には寄与するが、妊娠率向上にはつながらないという話しがありますが、それは、着床前診断により、エラーが出た胚については、移植しないためであり、妊娠率の母数を採卵回数とすれば、着床前診断の実施が妊娠率向上につながらないということになりますが、今回のように移植回数を母数とすれば、妊娠率が高くなる要因となることがはっきり出た数字だと思います。
さらに、着床前診断を受けた胚であれば、妊娠後の流産率も低くなることから、妊娠数と出産数の比も、1に近い数値ではないかと推察されます。やはり着床前診断を受けることが、近道の一つであることは間違いないのだろうと感じました。
4一部、数字がおかしい病院がある。
九州に異常に成績の良い(平成27年実績は71%でしたが、開院以降の累積成績が96.3%(?!))病院が一つあります。同病院のHPの治療実績をみても、そこまでの成績ではなかったので、何かの間違いなのだろうと思います。
それから、大阪の病院で、妊娠率が56.4%なのに、凍結胚移植妊娠数について備考欄で「妊娠率が高く49%」と記載されており、矛盾がありました。
5まだまだデータが足りない
ほとんどの病院が妊娠率35%から45%に収まっています。
有名どころの病院には、多くの患者が集まる=難しい患者も多くなる、ということからすると、おそらく妊娠率が押し下げられていると推察されるので、移植回数・妊娠回数がダントツに多いKLC(4552回/11886回。妊娠率38.3%)などは、やはり凄いという結論になるのかもしれません。
それが本当に凄いのかどうかを知るためにも、例えば・・・
(年齢別データがほしい)
年齢別データがなければ、実力が見えてきません。あるいは、患者の平均年齢でもいいかもしれません。
例えば、某有名な病院では、成功報酬制を導入していますが、対象は35歳以下です。
そうすると、平均年齢は低いのかもしれません。
平均年齢が高く、かつ成功率が高い病院が実力が高いかもしれず、かつ年齢層別のデータがあれば、明確になると思います(もっとも。40代以上の出産数が多くても、全員第5子の出産です、みたいなデータだと意味がないのですが。)。
(出産率のデータについて)
出産率を公表している病院は、前述の以前まとめた記事にも記載していますが、都内では木場公園クリニックくらいしかありません。出産までの追跡調査が難しいからなのですかね。あるいは、どうしても妊娠率>出産率となってしまうからか。
目的は妊娠することではなく、出産することなので、どうか出産率まで示して欲しいと思います。
個人的には、妊娠率と出産率の差が小さく、かつ成績がいい病院が理想なので妊娠率と出産率の両方がほしいのです。
(採卵戦略等)
他に欲しいデータとしては、採卵戦略別のデータですかね。日本では、自然採卵戦略と刺激採卵戦略の二つに病院の方針が分かれているので、どっちがいいのかをはっきりデータで示せるといいと思います。
これについては、どう考えても刺激採卵戦略の病院の方が妊娠率が高いはずなのですが、それが覆るようなデータが現れるなら、興味深いと思います。
採卵戦略ではなく、採卵回数でもいいですね。採卵回数のデータが出るのであれば、あわせて患者数が必要となります。
採卵回数が1000回だとしても、患者が1000人なのか、100人なのかで、データの意味がまるで変わってしまうので。
6その他
今回のダイヤモンドのデータは全国の約2割程度の病院のデータに過ぎません。
実際、JISART病院で記載のない病院も多数ありますし。
やはり、学会なり国で、網羅的なデータを作成・公開してほしいと思いました。
以上です。不妊治療の病院を検討している人で読んでいない方は、一部の病院のデータではありますが、一読する価値はあると思います。
終わり