#813 レビュー 『小説 清少納言「諾子の恋」』三枝和子 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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大河ドラマ『光る君へ』で、清少納言の恋愛遍歴、中宮定子との輝かしい生活と中宮定子への思いを描いた『小説清少納言「諾子の恋」 [ 三枝和子 ] 』を読みました。

中宮定子の存在が清少納言にとってどれほど素晴らしく、大きなものであったかを、知的遊戯を伴った恋愛遍歴とその生涯から知る1冊。

 

  レビュー

本書は、清少納言が生まれから死ぬまでの人生、その間の恋をつづった歴史小説で、ここでは諾子(なぎこ)と表されます。

 

この諾子というのは、江戸時代の国学者の多田義俊の『枕草子抄』で、清少納言が清原諾子としたことから、本書もその名前をとったものです。

 

父の清原元輔が60歳の頃に生まれたのが諾子で、晩年の子どもなだけにとてもかわいがられながら、和歌に漢学の素養を教え込まれ、16歳のときに橘則光と結婚します。この則光とは男の子をなすも夫婦関係としてはうまくいかず、離婚することになりますが、お互いを兄妹のような形で関係が続き、清少納言が定子の下で宮仕えをしている時も、近い職場でお互いに話すような不思議な関係が続きます。

 

清少納言は、法華八講で藤原義懐が法華経の一節をもじって、途中退場する清少納言をからかってきたのを、同じく法華経でやり返したというそういった機転の利く、知識が豊富なところが、藤原道隆・高階貴子夫妻の目に留まり、一条天皇に入内した娘の中宮定子の女房として迎えられるきっかけとして描かれているのが、大河『光る君へ』では描かれていないエピソードとして興味深い展開でした。

 

その後は、藤原実方との恋や、摂津守となる藤原棟世との再婚、中宮定子の下での知的センスあふれる愉しき女房生活と中関白家が没落していく中でも苦しい女房生活、その間の藤原斉信や藤原行成との和歌だけでなく漢詩も交えた知的恋愛遊戯などが描かれます。

 

棟世との間の娘として育てた小馬命婦が、道長の娘の彰子に仕え、安心した諾子は、その晩年を中宮定子が土葬された鳥辺野陵近くに住み、定子を弔う生活をすることが描かれています。その生活に入るにあたっては、和歌も漢籍も知識のある諾子には、その能力を惜しんで、上東院となった彰子などからも宮仕えの声がかかったそうですが、それを断って、諾子にとっては、光り輝く楽しい時代の中宮定子のそのことを静かに思って暮らし、中宮定子との思い出に浸りながら死んでいく姿が、改めて中宮定子への清少納言の特別な思いと鎮魂が描かれて、余韻ある作品になっています。

 

〈書籍データ〉

『小説 清少納言「諾子の恋」』

校 注:三枝和子

発 行:読売新聞社

定 価:1,100円

 1988年6月10日 第一刷発行

 図書館で借りた本のデータです。

 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

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