#811 レビュー 『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり』山本淳子 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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大河ドラマ『光る君へ』で、ついに、まひろが『源氏物語』執筆のため、中宮彰子の女房となるそのあたり以降のことを書いている『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書) [ 山本淳子 ] 』について

光る君へ』を楽しむのにおススメ!紫式部が中宮彰子の女房となり、『源氏物語』を執筆していくところの時代背景や作品の理解を深めるのによい1冊

 

  レビュー

著者の山本淳子さんは、私が平安時代のことを知るのにとても役立っている研究者で、平安時代についての見方を変えてくれたり、深めてくれたりする大変ありがたい方です。

 

本書は、サブタイトルにある通り、一条天皇の時代が中心となっています。その時代は、道長が政争で勝利を収めて政権を手中に収めながら、さらなる権力掌握への高みに昇ろうとしている時代であり、紫式部が中宮彰子のもとで女房として宮仕えをしながら、一条天皇を中宮彰子の下に通わせるために『源氏物語』を執筆していた時代です。

 

(NHK大河ドラマ『光る君へ』より、『源氏物語』を執筆するまひろこと紫式部(C)NHK)

 

本書は、主には一条天皇の即位から死までの間の期間、彼の人生と彼のキサキとなった女性たち、藤原定子、藤原彰子と藤原道隆・伊周、藤原道長・倫子夫妻といった家族たちや、清少納言や紫式部ら仕えた女房達のことをできるかぎり史実から探っていこうとするものです。

 

寛和2(986)年の花山院の出家退位事件から始まります。彼の治世から摂関政治が絶頂期に向かって動いていくことになります。藤原氏は娘を天皇に入内させて、男の子を生ませて、後の天皇に即位させて、外祖父として権勢を振舞う形です。特に、幼少期の即位なら摂政という形で実質トップとして振舞うことができます。

 

その”外祖父摂政”を久しぶりに実現したのが一条天皇の外祖父の藤原兼家で、それをさらなる高みに押し上げ、絶頂を演出したのが、後一条・後朱雀・後冷泉の参内に渡る外祖父として実権を握った兼家の子の道長で、本書は二人がいかにして政敵を退けて、それを実現したのか、その際に特に障害となった外祖父関係にない天皇をいかに退位に追い込むかが分かります。

 

道長については、強敵としては、なんといっても一条天皇の寵愛を一身に受け、出家したにもかかわらず還俗して敦康親王まで生んでしまう姪の藤原定子と、外祖父関係にはない一条天皇の次の天皇の三条天皇で、道長・倫子夫妻が子の強敵たちにどのように戦っていったのかが分かります。

 

清少納言が、のちに定子の鎮魂と定子サロンの素晴らしさを伝えるため『枕草子』を執筆しますが、当初の慣れない宮仕えに、家に帰ってしまったり、道長派と疑われてそのつらさから家に帰ることや、『枕草子』の与えた影響に対抗する意味でも、紫式部が『源氏物語』を執筆したこと、その『源氏物語』の”若紫”から、藤式部から紫式部という今に残る名前となるエピソードなどが分かります。
 

当時の政治状況や、『源氏物語』の執筆背景を学説の解説や著者の考えが表されており、大河ドラマ『光る君へ』で、それぞれの登場人物がどのように描かれるのか、”いい人”道長はその”いい人”ぶりのなかでいかに絶頂を迎えていくのか、それをどう描かれるのかを想像しながら楽しむのにいい1冊だと思います。
 

〈書籍データ〉

『源氏物語の時代 

一条天皇と后たちのものがたり』

校 注:山本淳子

発 行:朝日新聞出版

価 格:1,300円(税別)

 2007年4月25日 第一刷発行

 2014年2月10日 第10刷発行

 
 
 
 
 

 

 

 

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