#743 レビュー 『ダンテ』R.W.B.ルイス | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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ダンテの人生を衝いて知るために『ダンテ (ペンギン評伝双書) [ リチャード・ウォリングトン・ボールドウィ ] 』を読みました。

詩人であり、文学者であり、政治家でもあり、生まれ育った町から財産没収&死刑宣告まで受けて、イタリア各地を放浪しながら著作を続けたダンテの人生を知る

 

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  レビュー

ダンテ・アリギエリの『神曲』を読むための副読本4冊目、やはりダンテ自身を知らなければと思い、本書を読みました。

本の構成は画像の通りです。

 
著者のR.W.B.ルイスは、アメリカを代表とする伝記作家のひとりで、ピュリッツァー賞の受賞歴もある方です。
 
本書は目次にある通り、ダンテの生涯を追いかけながら、『新生』『帝政論』『神曲』などの各作品の執筆状況や作品の内容についての解説も行われるものです。
 
1265年にフィレンツェでダンテは生まれます。
 
祖先は皇帝コンラート3世により騎士に叙せられ、第2回十字軍に参加し、聖地に赴くもそこで戦死したカッチャグイーダというもので、この祖先は『神曲』で天国でダンテの前に姿を現し、フィレンツェの歴史、ダンテの家系と家名の由来、1300年以降のダンテの将来を語るという重要人物です。

 

9歳のとき、同じ年のベアトリーチェと初めて出会って、その場で心を奪われ、一生涯に渡って魅了され続けることになります。しかし、ダンテが積極的にアプローチをとることもなく、恋実らず、ベアトリーチェは親の考えて銀行家に嫁ぎ、そして24歳で夭折してしまいます。

 

ダンテは大変ショックを受け、哲学書を読みふけることになり、夭折したことにより彼をしてベアトリーチェが、単なる恋愛対象から神格化され、彼女に捧げる『新生』という作品を生み出させたことが分かりますし、それがのちの『神曲』でも重要な役割を果たす存在として描かれることになることが分かります。

 

ダンテは、10代で父を亡くし、家業を継いで成長していき、教皇派(グェルフ派)の一員として、皇帝派(ギベリン派)との戦闘にも加わり、教皇派が勝利して、30歳の頃には政治的リーダーとして振舞うようになり、並外れた雄弁な人として、執政官にも選ばれます。ただこの頃には教皇派内部で自治を求める白党とより教皇に近づこうとする黒党に分かれ、白党のダンテは自身がローマへの使節団としてフィレンツェを離れている時に、黒党の巻き返しで、1302年には汚職の罪で焚刑まで宣告され、フィレンツェに変えることができなくなり、亡命詩人として生きていくことになります。

 

その人生の過程で、ダンテとしては、政治に関わりながら文学などの創作活動をすることが理想的な生き方で、政治により平和をもたらして著作活動ができるようになること、その平和をもたらすためには有能な指導者が神聖ローマ帝国の皇帝となり統治して、イタリアに平和をもたらすことが重要だと考え、それをかなえてくれそうな人としてルクセンブルクの若きハインリヒ7世などに期待を寄せて手紙を送るなど、著作活動をしながらも、イタリアの在り方を考え続けていたということが分かります。

 

こういった政治姿勢や、『神曲』をラテン語ではなく、のちにそう呼ばれるイタリア語で書いたことから、今でもイタリアの公教育の現場でダンテが教えられることにつながっていくことが想像できました。

 

ダンテにしてみれば、生まれ育ち、ベアトリーチェとも出会い、政治的リーダーも務めたフィレンツェから追放され、以後、フィレンツェに戻ることはできずに、亡命詩人としてイタリア各地の名士の下を渡り歩き過ごしながら、『神曲』などを生み出し、1321年にラヴェンナで死にますが、1世紀のちには、フィレンツェがダンテの遺骸をラヴェンナから取り戻そうと、教皇レオ10世迄動かして、フィレンツェのミケランジェロのもとに届けさせる手続きをとるが、ラヴェンナではフランシスコ会の修道士たちが亡きがらを持ち去り、1865年の礼拝堂改築で建設作業員が偶然に見つけるまで、どこにその遺骸があるのかが分からないままになっていたそうです。

 

ダンテなら死後100年後にフィレンツェの人たちが、ダンテの亡きがらを引き取りたいと動いたのを知ったとき、どう思ったんだろうかと想像してしまうエピソードも知り、人物像がある程度わかったので、『神曲』に挑もうという心構えができました。

 

<書籍データ>

『ダンテ』

著 者:R.W.B.ルイス

訳 者:三好みゆき

発行所 株式会社岩波書店

 2005年2月18日 第1刷発行

定 価:2,500円(税別)

 ペンギン評伝双書

 図書館で借りた本のデータです。

 
 
 

 

 

 

 

 

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