#738 レビュー 『源氏物語あさきゆめみし 5』大和和紀 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

歴史をもっと知りたい!
本を読めば広がる光と闇を楽しんでいます。
歴史と読書記録。積読などをアップしながら、日本史や世界史を問わず歴史の考察などを発信します。

引き続き、紫式部の『源氏物語』のマンガ『あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫) [ 大和 和紀 ]』を、今年の大河『光る君へ』に合わせて再読

紫の上が亡くなり、光源氏は失ってその大切と自分が傷つけてきたことを知り、ついに自らも亡くなる『源氏物語』第1部完

 

  レビュー

第5巻は、とにかくいろんな不幸とそれによる死が続くものとなっています。

光源氏が”藤壺”と聞いて正妻に迎える女三の宮の存在で心おられた紫の上が亡くなり、そのショックから光源氏もついに亡くなるという『源氏物語』第1部光源氏の恋愛遍歴が終わります。

 

第5巻で登場する主な女性・男性と光源氏の関係

藤壺:死去するも相変わらず心をとらえ続ける女性。

紫の上:光源氏が三の宮を正妻に迎えたことで、ついに心が折れ、光源氏を愛しながらもその苦しみから逃れたいと願い、ついに死去する。

明石の上:娘を紫の上に託し、一歩引いたことで紫の上と同志のような関係性を築く。

花散里:光源氏の心休まる存在の女性、元服した光源氏の息子の夕霧の母役を務める。

女三の宮:朱雀院の三番目の娘、光源氏に正妻に迎えてくれるようにお願いする。その願いを聞き入れたことがいろいろな問題の火種となる存在になってしまう気の毒な女性。

女二の宮:朱雀院の二番目の娘、光源氏のライバル頭の中将の息子の柏木と結婚するもその関係は冷えたままに、柏木が親友の夕霧(光源氏の息子)に後事を託したことが・・・

頭の中将(内大臣):若いころからの光源氏のライバル、内大臣となった今もライバル視するが息子柏木に先立たれてしまい、気落ちしてしまう。

柏木:頭の中将の息子で、光源氏の正妻となった女三の宮に恋心を抱いてしまって、一線を越えて子どもができてしまい、それを光源氏に知られて、自責の念に駆られ続けた末に

夕霧:光源氏の息子で、幼馴染の雲居の雁と結婚する。友人の柏木が正妻の女二の宮を置いて女三の宮に恋することに初めは理解できなかったが、柏木が亡くなる間際に女二の宮の後事を託されるうちに、恋を知る。

 

第5巻について

光源氏が正妻の女三の宮のところで、柏木の文を見つけて二人が男女の仲であることを知ります。しかも柏木の子を身ごもっていることも知ることになります。将来を期待していた柏木の行動と幼き女とみていた女三の宮が柏木を受け容れたことに激しい怒りを感じます。

 

一方の柏木は、光源氏に女三の宮との関係を知られて、恐れから病に臥せることになり、はっきりと非難してこない光源氏のその視線に堪えられなくなり、ついに亡くなってしまいます。

 

女三の宮も自らが柏木を招き入れたわけでなく、望んだわけでもないのに光源氏につらく当たられて苦しむ中で、柏木との間の子の薫を生みます。光源氏は朱雀院の手前もあって自分の子どもとして育てることにしますが、女三の宮は光源氏のあたりのつらさに堪えかねて父の朱雀院に願い出て出家してしまいます。朱雀院もせっかく光源氏に託したのに・・・というところです。

 

柏木は死ぬに際して、正妻の女二の宮(朱雀院の娘)のこと親友で妹の雲居の雁の夫である夕霧に託します。それが更なる波乱を生むことに、幼馴染でお互いの初恋を実らせて結婚した夕霧と雲居の雁、仲睦まじい夫婦だったのですが、夕霧は女二の宮の下に通ううちに、なかなか心開かない高貴な女性の女二の宮に恋してしまいます。女二の宮は受け入れを拒み続けますが、柏木が女三の宮を一方的に思って言い寄ったように、夕霧も言い寄っていくことになり、それが雲居の雁が実家に帰る別居を生み出し。女二の宮の母が二人の関係の誤解から死に至る悲劇を生み出していきます。父の光源氏ほど恋愛がうまくないと自覚しながらも、その恋愛で回りに苦しみを与えることは父と変わりがないようです。というか平安王朝の貴族男性というのはそういうものだということを紫式部が『光源氏』で表わしているんだと思います。

 

そんな光源氏の次の世代の男性たちの恋愛とその悲しみや苦しみが展開される中、光源氏に心おられてしまった紫の上は、女三の宮が出家したことを知り、女が男との恋愛の苦しみから逃れるにはどうすればいいのか、光源氏が出家を許してくれない今、死ぬことなのか考えるようになり、ついに亡くなってしまいます。

 

それは、光源氏に本当に大切な人は誰だったのかを気付かせるものでした。しかし、もうその時には手遅れで、光源氏も紫の上を失い、意気消沈し、恋愛遍歴もついに終わり、過去の女性たちを思い出し、出家して紫の雲(紫の上)が迎えに来て亡くなります。光源氏の出家や最期のシーンは描かれていません。大河ドラマなどでいうナレ死的な扱いで終わります。それはやはり光源氏という光り輝く存在には似合わないからこそなんだと思います。

 

ついに『源氏物語』第一部光源氏の恋愛遍歴編が終わりです。さまざまな恋愛遍歴をよくぞここまでまとめ上げたものだと思います。

 

〈書籍データ〉

『あさきゆめみし ⑤』

著 者:大和和紀

発 行:株式会社講談社

価 格:660円+税

 2001年8月3日 第1刷発行

 2017年8月2日 第44刷発行

 講談社漫画文庫 や1-32

 
 
 
 

 

 

 

 

にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村