『光る君へ』で女房として生きたいと語る清少納言が、その生き方についての男性の見方の不満を随筆『枕草子 上 (ちくま学芸文庫) [ 清少納言 ]』の第21段に描かれています。
女房で働く女性に対する男性の見方の不満と、その女房こそが結婚相手にふさわしいと胸を張る清少納言
(NHK大河ドラマ『光る君へ』で中宮定子の側にお仕えする清少納言(C)NHK)
『枕草子』第21段の”女房の素晴らしさと男性の目”
『光る君へ』で内裏で女房として生きたい。自分のために生きたいと強くまひろに語った清少納言さんですが、女房として働くことについての男性の見方の不満や、そんな男性たちに女房こそ結婚相手にふさわしいという主張が『枕草子 上 (ちくま学芸文庫) [ 清少納言 ]』の第21段にあります。
まずは、女房についての男性の見方への不満についての引用(『枕草子 上 (ちくま学芸文庫) [ 清少納言 ]』より)
宮仕へする人をば、淡々しう、悪ろき事に、思ひ居たる男こそ、いと憎けれ。
実(げ)に、其も、又、然る事ぞかし
現代語訳は
「宮仕えする女性のことを軽々しく、よくないことに思っている男性は、ほんとに憎らしい。ただし、それももっともかな、と思わぬ節もないではない」
と、女房を軽々しいと思う男性を憎らしいとしながらも、確かにそうみられる理由もあると述べています。恐らくこの男性というのは貴族男性を指しているのではないかと思います。
その理由として、宮中で女房として働いていると、顔を隠しているわけにいかず、多くの方々に顔を見られてしまう。高貴な女性ならば男性にやすやすと顔を見せることがないように振舞います。
(NHK大河ドラマ『光る君へ』で顔の全てを見られないように扇で隠す上級貴族の女たち(C)NHK)
女房だとそれができないので顔が見られてしまうために、それが宮中の男性たちに軽々しく見られてしまうんだという状況に理解を示しながらも、やはり憎たらしいという思いも持っているのが清少納言さんです。
そんな清少納言さんですが、男性たちに結婚相手には、宮中で宮仕えとして働く女房こそふさわしいと主張します。
該当部分の引用(『枕草子 上 (ちくま学芸文庫) [ 清少納言 ]』より)
受領の、五節など、出だす折、然りとも、甚う鄙び、見知らぬ事、人に問ひ聞きなどはせじと、心憎き物なり。
現代語訳は
「受領階級の男が、五節の舞姫として娘が選ばれた時に、自分自身は地方勤務が続いて鄙びていて、宮中のことを何も知らずとも、宮仕え体験のある妻の助言で、いちいち人に聞いたりしないでも役目を果たせる。そんなあり方にも、わたしは心惹かれる。やはり、宮仕えする女性の体験は、役立つのである」
と書いています。『光る君へ』で自分のために生きる!内裏で女房として生きる!と宣言した少納言さんの面目躍如な段ですね。
内裏で女房として生きたい!と思いのたけをまひろに述べるききょう(清少納言)について
※『枕草子』の段分けは、いろいろ分け方があるそうです。当ブログは島内裕子さんの訳によるちくま学芸文庫の『枕草子』によります。