『ホメロス イリアス 下 (岩波文庫 赤 102-2)』 読書目標”とにかく読了 ギリシア悲劇”で、ギリシア悲劇を楽しもうとすると、ホメロスの作品を読まねばということで読みました。
すでにトロイア戦争で戦闘中の最中から始まる。ギリシア側の英雄アキレウスがギリシア総大将アガメムノンともめて戦いをやめてしまうその不在の間のギリシア側の苦戦を描く
レビュー
上巻は、ギリシア側の総大将のアガメムノンと無敵の英雄アキレウスの仲たがいで、アキレウスが戦列を離れ、母の女神テティスに自分の屈辱を晴らしてほしいと願い、女神テティスが主神ゼウスに嘆願してゼウスが応じたことで戦局が一気に変わります。
ゼウスがトロイアの王子で勇者のヘクトルを味方することで、一気にトロイア勢が攻勢をかけ、押しまくられるギリシア勢という状況になります。トロイア国のイリオスから押し返されて、ギリシア勢が船を陸にあげた陣地まで押し返されます。
このような中、ギリシア側ではアガメムノンが自らの非を認め、アキレウスから奪い取ったブリセイスを返して、かつ様々な美女、領土、そしてアガメムノンの娘を嫁にもらえるまでの恩賞を出してアキレウスに戦線に戻ってきてもらうようにお願いすることになります。しかし、アキレウスはまだ怒り心頭でその申し出を拒絶し、戦線には復帰しませんでした。
トロイアの王子ヘクトルらにどんどん押される中、アキレウスの盟友パトロクロスがギリシア軍の苦境に見かねて、アキレウスにその武具を借りて、自分がアキレウスとして出陣することでこの危機を救いたいと申し出ます。アキレウスはそれに応じます。ただし、トロイア勢をギリシア軍の陣から追い返したら戻ってくること、イリオスにまで攻め込まないことを伝えます。
アキレウスに扮したパトロクロスが現れると、ギリシア勢は士気が大いに上がり、逆にトロイア勢はアキレウスの強さの恐怖のあまり、総崩れとなりイリオスに引き返していきます。パトロクロスはアキレウスの言葉を忘れたかのようにイリオスにまで攻め寄せてしまい、そこで神のいたづらというべきかパトロクロスのかぶるアキレウスの兜が外れ、アキレウスではないことがバレた結果、ヘクトルに討たれ、その武具が奪われてヘクトルに身につけられてしまいます。トロイア勢が攻勢に出ます。
このことを知ったアキレウスは、パトロクロスの死を大いに悲しむとともに、復讐の鬼とかしてついに戦陣出ます。アキレウスが戦陣に戻ると、一気に戦局はギリシア優勢となり、トロイア勢が次々とアキレウスに血祭りにされ、総崩れでイリオスに逃げていきます。そんな中、トロイア王子で軍を率いるヘクトルは、イリオス城の前でアキレウスを待ち受けます。トロイア王のプリアモスや妃のヘカベ(ヘクトルの両親)はアキレウスと戦わずに逃げることを進めますが、ヘクトルはアキレウスに討たれてしまいます。
ヘクトルは討たれたときに、アキレウスに自らの遺体を両親に帰してほしいと願いますが、復讐の鬼とかしたアキレウスは、ヘクトルの死体を自らの戦車につないで引きずり回すという行いをします。ヘクトルはアキレウスに対して、イリオス城のスカイア門で弟のパレス(アレクサンドロス)とアポロンによってお前も死ぬ運命だぞと言葉を残します。
アキレウス自身は、すでにトロイア出陣に際して、出陣すればそこで死ぬ運命にあることを伝え垂れていましたが、ここでさらに具体的な予言として伝えられることになります(この作品では描かれませんが、ヘクトルの予言の通りの死が待っていました)。
その後、オリュンポスの神々の力添えもあり、トロイアの老王プリアモスはアキレウスの陣に行くことができ、そこでアキレウスに親子の情に訴えて、莫大な黄金との交換でヘクトルの遺体を取り戻すことができました。
『イリアス』は。トロイア戦争の全体を描くというよりも、その中でもギリシア、トロイアともにどちらが勝つかはっきりと分からない中、英雄的存在のものが並び立ち、争い合う場面を切り取って描かれたものだということが分かりました。
実際には、まだまだ戦いが続きますが、トロイア側はこのヘクトルの死がかなり大きく響いてしまいます。読んでいる限りではトロイア側はヘクトルとその他大勢な感じなので・・・まだまだ続きますが、ここで戦いの頂点を越えた感じになります。
〈書籍データ〉
『ホメロス イリアス 上』
著 者:ホメロス
訳 者:松平千秋
発 行:株式会社岩波書店
価 格:800円+税
1992年9月16日 第1刷発行
1999年10月5日 第14刷発行
図書館で借りてきた本のデータです。