ギリシア地図・年表・神話主要系譜の付録がありがたい1冊。内容についてはギリシア悲劇を挑む前に読んだために、私にはレベルが高すぎたかと反省の1冊
レビュー
各ギリシア悲劇を読む前に、もう少し全体的イメージをつかみたいと思ったので選んだのがこの全集の別巻です。
大半の部分については、私がギリシア悲劇については著者と作品名くらいしか知らないので、内容の比較や、韻律といったことなどは、ギリシアの横文字の嵐で???で、反省しながらの読書でした。
役だったところとしては、一つは後ろにつけられているギリシア悲劇についての
・用語解説
・年表
・悲劇と関連してのギリシア神話主要系譜
・関連地図
で、これは今後作品を読んでいく上で側において生かしたいと思いました。
もう一つは、三大悲劇作家のアイスキュロス・ソポクレース・エウリピデースのそれぞれの人物に関する章と丹下和彦さんが担当した「上演形式、劇場、扮装、仮面」のところです。
ギリシア悲劇は俳優(女優はいない)と合唱隊(コロス)で構成され、アイスキュロスは俳優二人と自らも俳優として出演し、アイスキュロスよりも前の悲劇作家テスピスも自ら俳優として出演している。
アイスキュロスの次のソポクレースも俳優として出ていたが、地震の声が小さいこともあって、自ら出演はせずに、俳優を3人にした。そしてギリシア悲劇は3人で演じられ、3人が様々な仮面を用いることで演じ分けるということを知ることができました。
アテナイの大ディオニューシア祭にて悲劇などが上演され、そこでは悲劇や俳優・合唱隊などのコンテストが行われること、この大ディオニューシア祭は海外の使節らも来訪した一大イベントで、アテナイ市民にとってはその参加が神聖な義務でもあり、誇らしい社会的義務の一つであったことということで、アテナイだからこそのギリシア悲劇成立なんだと思わされました。
コンテストについても、そのギリシア市民の神聖な義務というだけあって、アルコン(執政官)が、大ディオニューシア祭に出場できる3人の詩人を選考し、その詩人らに合唱隊(コロス)の割り当てとこれらの費用を負担する財力に余裕のある市民からコレゴスを任命する。のちには3人の俳優の内の第一俳優についても国家が割り当てる制度になるという国家事業として行われていたことが分かりました。
悲劇詩人(作家)の大きな流れとしては
テスピス → アイスキュロス → ソポクレース → エウリピデース
で展開していく。題材はギリシア神話だがそのときのアテナイを中心とした古代ギリシア世界の状況によって、同じ題材でも作家による取り上げられ方が変わることも分かりました。
このように、ギリシア悲劇について副読本で読んでいけばいくほど、ギリシア神話を詠まなければならないということと、その盛衰についてギリシア世界の特にアテナイ(アテネ)の盛衰にかなり関連があるのでその歴史を知らなければならないという思いが強くなってきます。この本でもその思いをより強くすることになりました。
〈書籍データ〉
『ギリシア悲劇全集 別巻』
編 者:松平千秋・久保正彰・岡道男
発 行:株式会社岩波書店
価 格:4,500円(税別)
1992年6月26日 第1刷発行
図書館で借りた当時のデータです。