#522 本レビュー『歴史街道 令和6年1月号』の感想 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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NHK大河ドラマ『どうする家康』も大坂の陣、その大坂の陣を特集にした『歴史街道2024年1月号(特集1「大坂の陣・語られざる舞台裏」)』の感想

大河では描かれない大坂の陣の特集と、12月1日上映開始の映画『ナポレオン』にちなんだナポレオンの特集

小ネタとしては、2024年の干支の龍について



歴史街道2024年1月号(特集1「大坂の陣・語られざる舞台裏」)

 

  レビュー

今回は大河ドラマ『どうする家康』も、ついに最後の戦いとして大坂の陣が描かれます。戦無き世(浄土)の実現を目指す家康に対して、戦の世(穢土)を望み続ける最後の敵役が実は秀頼という感じの展開ですが、史実としてどうだろか、特に描かれないであろう部分について読みたいと思って購入しました。

特集1 大坂の陣・語られざる舞台裏

徳川家康が豊臣家を潰したかったのかという点について、河ドラマ『どうする家康』では、静かに豊臣家の力をそぎ、公家として扱うつもりだったのが、豊臣方が武家として、天下人として振舞うために挑発したから戦ったという描き方になっています。

 

この特集の笠谷和比古先生は、家康は「豊臣公儀の傘下から抜け出し、家康を頂点とする新たな公儀体制をつくるため」に征夷大将軍に就任し、「家康の将軍制」と「秀頼の関白制」という「二重公儀」の共存共栄モードを設計したと主張され、そこらへんは大河と同じ感じです。そんな徳川家康も1608(慶長13)年から大阪城周辺に譜代大名を配置して城を修築させて「敵対モード」に入っていくそうですが、この時点での明確な理由は分からないようです。

 

家康としては高齢で寿命が近づく中、家康のそのカリスマでもっている状況が、家康死後の秀忠では、豊臣恩顧の大名たちが秀頼のために立ち上がるかもしれないという”後顧の憂い”からやはり滅ぼすしかないと変化していたことが説明されます。確かに実戦経験がほとんどない秀忠については、実戦経験豊富な福島正則、加藤清正らが従わなくなる可能性は十分あったと思います。

 

大河では描かれない大坂浪人衆の織田頼長、新宮行朝などの人物説明もあり、大河では味わえない大坂の陣についての理解が深まる特集だと思います。

 

特集2 ナポレオンの真実

12月1日から上映されている映画『ナポレオン』、映画監督リドリー・スコットが、なぜナポレオンに注目し、どのように撮影しようとしたのか、ジョセフィーヌへの言及もあり、二人の関係がどのように展開されるのかも注目だなと思います。

 

ナポレオンについては、その生涯に関しての特集と、4つの大きな戦いについての特集に分かれます。

フランスから独立しようとしたコルシカ島出で生まれたナポレオン、父はコルシカ独立ではなくフランス王の下での出世を選びます。その選択がナポレオンの人生に大きな影響を与えることが分かります。フランス革命で王制を否定し、ジャコバン派の恐怖政治が破綻し総裁政府が成立したとき、兵士はいっぱいいるが革命により貴族の将校の多くが亡命してしまい指揮官不足のフランス軍において、士官学校卒のナポレオンは貴重な人材で、そこからナポレオンの皇帝になりあがり人生が展開されます。

 

ナポレオンの皇帝即位について面白かったのが、革命で王制を倒し、共和制が成立したのに、そこから帝政にいたる流れについては、ナポレオンの野望だけに帰するのではなく、古代ローマの王政から、共和制ローマ、そして帝政ローマになったように、西洋世界からはありうる流れであったこと、ヨーロッパの王は一民族の王で、皇帝は一民族一国家の王ではなくもっと広い世界を見据えた選択肢であり、ナポレオンもその見地や、革命後の恐怖政治にしろ、総裁政治にしろ安定しない状況を暗転させるためにも皇帝に即位したという視点は新鮮でした。

 

ただ、もとからのフランス出身でもなく戦争での鮮やかな勝利で皇帝にまで上り詰めた成り上がりの「皇帝」ナポレオンにとっては、この帝位を保つためにはとにかく戦争での勝利でしかないのが、際限なく続くナポレオンの戦いとそれに動員された国民の悲劇と、フランス人意識の臣下との断絶から転落へとつながっていくものだったんだなというのが分かりました。

 

ナポレオンの構成の影響としては、フランス革命は王制を打倒するも、安定しない議会制政治の末に、ナポレオンが皇帝になる流れとなってしまいましたが、ナポレオンの存在と行動が、ヨーロッパ各地に民主主義の種をまくことになり、ナポレオン失脚後はヨーロッパの民主化の種が育っていったことは確かにそうだと思いました。

 

小ネタ 2024年の干支”龍”など

十二支の中で唯一の空想上の生き物”龍”が2024年の干支になります。

この龍については日本と中国では少し異なっているそうです。その違いは、龍と蛇の区別が明確(中国)か不明確(日本)になるそうです。

中国では、『本草綱目』という本によると爬虫類の分類では

 甲羅があるものを亀、

 手足の無いものを蛇、

 それ以外の手足のあるものが龍

となっているんだそうです。

日本では「龍蛇」という言葉で一緒にされてしまうようにあいまいで、神話や伝説では龍が蛇に変じたり、その逆だったり、巨大な蛇を龍と読んでいるケースなどあるそうです。

そんな話から始まり、空海の降雨祈祷や、俵藤太の大ムカデ退治などの伝説といった龍にまつわる話が展開され、日本人と龍の関係に思いを馳せることができる企画になっています。

 

歴史マンガの漫画家特集は、

大河ドラマ「光る君へ」 - NHK』を楽しむのに役立ちそうなマンガのD・キッサン『紫式部のありえない日々』についてというもので、『源氏物語』の著者の紫式部を主人公に、萌えと推しという今にマッチする感覚でその日常を描いた作品とのことで、その視点の斬新さに読んで刺激を得たいと思いました。

 

〈書籍データ〉

『歴史街道 令和6年1月号 第429号』

発 行:株式会社PHP研究所

価 格:840円(税込)

発 売:2023年12月6日

 
 
 
 

 

 

 

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