名将ハンニバルの謎"アルプス越え"は、どこを越えたのか?資料だけでなく様々なルートのアルプス越えを実際に行って確認した著者の執念の1冊
ハンニバルのアルプス越えの謎に挑む
<書籍データ>
『ハンニバル アルプス越えの謎を解く』
著 者:ジョン・プレヴァス
訳 者:村上 温夫
発 行:株式会社白水社
価 格:2,400+税
2000年10月10日発行
歴史の謎 ハンニバルはアルプスのどこを越えたのか?に挑む
”ハンニバルのアルプス越え”は、第二次ポエニ戦争でイベリア半島から北上し、フランス側からアルプスを越えてローマ本土に攻め入ったカルタゴの名将、ハンニバル・バルカが行った驚異の作戦です。
このアルプス越えは、長い間歴史学者の間でどこを越えたのかが論争となり、今も謎として存在しています。その理由はローマが第三次ポエニ戦争(前149-前146)で都市カルタゴを徹底的に破壊しつくし、住民も奴隷などで売り払って地上から消し去ったことから、カルタゴ側の資料がないというのが大きな原因になっています(あるのは、勝者ローマ側やギリシャ人による資料)。
著者は、残された資料の読み込みだけでなく、考えうるアルプス越えのルートについて、現地を踏破するという確認も行っています。文献にある年中雪に覆われているや、大きな岩の存在などと実際に踏査して、どこがその年中雪に覆われているところなのかや、ガリア人らの襲撃が行われそうな場所はどこなのかなどを探ってルートの確定に取り組んでいます。
こういった謎を確認する際には、今回の”ハンニバルのアルプス越え”については、文献資料が行軍したものの記録や実際に見たものの記録ではないことからすると、文献だけでなく実地調査で確認することも重要で、それを著者は丁寧に行ないながら検証を重ねていく姿勢には好感が持てます。
私自身はどのルートが正しいのかというのは分かりませんし、アルプスで考古学的な発見がなされれば謎が解けるのかもしれません。著者の文献資料だけでなく実地踏査を行いつづけた結果での通説とは異なる主張には十分納得するものがありましたし、そのルートに基づいて行われたアルプス越えの厳しさは、それを成し遂げたハンニバルの凄さに感服の想いがより強くなりました。
ハンニバルのアルプス越えの謎について関心のある方は、これを読んでそのルートの困難さ、ハンニバルの凄さに思いを馳せることができる1冊です。