2023年は、大河ドラマが『どうする家康』を楽しむ為に年末年始に読む第7弾
『近世日本国民史』豊臣秀吉(二)
豊臣氏時代 乙篇
近世日本国民史 豊臣秀吉(二) 豊臣氏時代 乙篇 (講談社学術文庫)
徳富蘇峰の『近世日本国民史 豊臣秀吉(二)豊臣氏時代乙篇』を読了しました。
<書籍データ>
『近世日本国民史 豊臣秀吉(二)』
著 者:徳富蘇峰
発行所:株式会社講談社
1981(昭和56)年9月10日 第1刷発行
定 価:840円
講談社学術文庫
もともとは大正9年ころに執筆
考察や感想
豊臣秀吉(二)は、(一)の小牧長久手からの徳川家康との対立の決着から、九州平定、キリスト教に対する政策、北野大茶会、聚楽第行幸による泰平の世の機運までになります。全体の3割が九州平定の対象なった島津家についての歴史が述べられます。
酒井忠次の鉄板ネタ”海老掬い”
今回の『どうする家康』の第1話から炸裂している酒井忠次の”海老掬い”ですが、ここでもしっかりと登場していました。徳川家康が豊臣秀吉と対立を深める中、家康としては後背を固めるために北条氏政・氏直親子との同盟に向かい、対面します。
そこで披露されたのが、酒井忠次の”海老掬い”で、その滑稽さや、家康の北条氏を持ち上げる交渉で見事に同盟をなし、後背を固めて秀吉との戦いにという流れになっていきます。
”海老掬い”が鉄板ネタなわけですね。
ということで、恐らく、『どうする家康』においても何度も登場することになるんでしょう。
キリスト教(耶蘇教)への対応
九州平定で九州入りした秀吉、それまでは貿易の利などからキリスト教については寛容な態度で、正妻の北政所さえも信者にしてしまおうという厚遇ぶりを見せていましたが、九州の状況を見て、九州があたかもキリスト教国(耶蘇教国)のような様相を呈しているところを目にして、日本全国の統治者の自分の力に対する治外法権的な存在に対して危険を感じるとともに、ポルトガル商人らが日本人を奴隷として売り飛ばしていること、宣教師たちはそれを積極的に止めようとしていないこと(彼らはそれはできないと)などから、ついに近況にかじを切る説明がなされています。
確かに、その状況を目にすれば、統治者としては当然の流れになるんだと思います。
泰平の気象とその悪影響
九州平定をし、その帰り駄賃で毛利輝元との関係もはっきりさせ、凱旋した秀吉。京都で北野大茶会や、聚楽第を造営し、後陽成天皇の行幸を実現させて、天下泰平の雰囲気を生じさせますが、そのことについて、徳富蘇峰氏は、これが戦国大名たちの心を緩ませることになってしまい、その結果として唐・朝鮮への進出が失敗に終わらせてしまった一因であることを指摘しています
確かに長く戦いが続く中、その戦いの世に飽きてきた雰囲気があふれてきており、広く世の中に天下泰平が求められていたとはいえ、それを秀吉の取組が演出が過ぎてしまったということでした。
対外進出を考えていなければよかったのですが、このときにはすでに秀吉は、朝鮮から唐へと考えていたので、これは薬が効きすぎたという評価を下しています。