毎朝、餌を撒く。

小さな来訪者達は体を真ん丸にして庭木の枝で私を、いや、朝食を待っている。

硝子の向こうでは娘達が此方を凝視している。
早くこっちにおいで。と。

片手一杯に握った穀物を木箱へ入れて彼等に背を向けると、小さな翼をはためかせて彼らは餌箱に次々と舞い降りる。

はじめは四羽のチームだったのだが、日を追う毎に数を増し今じゃ結構な数だ。

クチコミで広まったか?


ヒヨコ猫の家に行くとゴハンが貰えるらしいぜ。

ヒヨコあの家の猫は、外に出ないから大丈夫らしいぜ。

ヒヨコ冷やご飯から、小鳥の餌にグレードアップしたらしいぜ。


…まぁ、こんな噂話なんだろう。

雀は無条件で可愛い。
慈しむべき野鳥だ。
最近は、悲しいかな、数が減っているとか。

雀に関心を持っているのは私だけではない。その度合いから言えば、娘達の方がずっと勝るだろう。

餌を啄む雀達を窓際から食い入る様に見ている我が娘達。
時折、囀りの様な鳴き方をしながら、飽きもせずに見つめ続ける。

元来、優れたハンターであろう娘達にとっては何とも口惜しい状況に違いなかろう。硝子一枚隔てた場所に獲物がわんさか群れを成しているのだから。

深窓の令嬢なので仕方の無いこと。
外の世界は怖い事ばかりだ。


一生懸命餌を啄む雀を押し退ける様に、一羽の土鳩が現れる様になった。

土鳩は体が大きい。
可愛い顔をしていない。
何と云っても厚かましい。

餌箱のセンター、若しくは餌が一番多い場所に陣取り食い漁る。

可愛くない。
と、思ったのも私だけではなさそうなのだ。

土鳩が登場すると娘達も少し荒くなる。


にゃー貴方、アッチに行きなさい!!


優雅で温厚な新之助さえ一言言わずにはいられないらしい。

…と、言うか
やはりハンターたるもの獲物は大きい方が本能をより刺激するのだろう。
お尻をもぞもぞ動かして狙いを定めたりしている。

娘達の威嚇で、ほんのちょっと後退したりするが、あくまでもポーズと云うか社交辞令なんだろう。厚顔の土鳩は、ヒョコヒョコと直ぐに戻って来る。

土鳩の襲来で雀達は一時避難するのだが、彼等も強かな野鳥。コーヒーを飲み終わる頃には土鳩の存在など気にする風もなく、一心不乱に食事しているのだ。

まぁ、いらぬ心配だ。


明日の朝も、娘達の野鳥鑑賞の為に私は餌を撒く。
昨夜は殊更冷えた。

ベッドの足元の真ん中が、膨らんでいた。

今夜はセンターなんだガーン

海老蔵とは毎晩一緒に寝ているが、彼女はいつも左側に寄っていてくれる事が多い。しかし、昨夜は決めていたらしく全く移動する気もない様子だった。

海老蔵は頑固だ。
海老蔵は気難しい。

仕方がないので、右側ギリギリのポジションに身を置くことにした。
そんな時に新之助のお出ましだ。

にゃー寒いわね。一緒に寝てあげようかしら。

得意げどうぞ。

暖まりかけた布団を捲り、新之助が入りやすくする。

にゃー…やめようかしら?

にゃー…どうしようかしら?

新之助は優柔不断だ。
新之助はマイペースだ。

布団の中に入ったり出てみたりを何度か繰り返し、自分のベッドに戻っていった。


いつもの事だが、
よくわからない。

結局、朝まで海老蔵はセンターから移動することなく快適な睡眠を満喫した様だった。


今朝も元気に雀達に話し掛けている娘達。

土鳩が餌を横取りするのが気になるらしい。
娘達のトイレを掃除していた際、四つ目に差し掛かったところで虎太郎が登場した。

にゃーキレイキレイしてるの?

得意げそうよ。今日も良いウンチしたのね。

などと会話しつつウンチを片付ける私と、キレイになるトイレを凝視する虎太郎。


キレイになったトイレを元の場所に戻そうとしたら、虎太郎が早速トイレに入ってきた。

キレイなトイレで用を足したいのは人も猫も同じだ。
しゃがみこんで偉く真剣な顔をしている虎太郎。
頑張っている時には、鼻が少しだけ膨らむ。

彼女の体内から排泄されたばかりで湯気の立つウンチを小さなスコップで拾う。

嗚呼、
何て愛しいんだろう。

強烈な臭いの虎太郎のウンチ。大好きなビスカルとクリスピーとカリカリと鮪節とカニカマと小魚を美味しく食べて、小さな内蔵で消化吸収され、くるくる腸を通ってきた其れ等の残骸。

愛しい娘達から排出された事を思うと、猛烈に臭う物体にも愛情を感じてしまう。

あはは。