新篠津村(しんしのつむら)。人口3千人くらいの、札幌から一番近い「村」だ。しばらく水田と畑が地平線まで広がる田舎の景色が続くが、やがて道の駅に着くと風景が一変する。篠津湖沿いに巨大なキャンプ場があって、何十、何百ものテントが思い思いの場所に陣取っている。
よく晴れた日曜の午後、BBQで盛り上がる大人たち、キャッチボールする子供たち、公園の水たまりで水遊びする幼児とその母親。終わりかけた夏を拒むかのように、その場所はたくさんの人で賑わい、そしてその誰もが本当に楽しそうに見える。
村のシンボル「しのつ公園展望台」は、三角帽子の妖精あるいは、こぢんまりとしたデコレーションケーキのようで、小さな丘の頂に誇らしげに建っている。メルヘンチックな展望台を囲むように色とりどりのテントが並ぶ光景は、さながらリアル版「どうぶつの森」といった雰囲気。
篠津湖は、冬になればワカサギが釣れるのだという。そう言えば30年近く昔、かの「水曜どうでしょう」で大泉洋とミスターがここでワカサギ釣り対決をやっていた。夏はキャンプ、冬は温泉とワカサギ釣りが楽しめるという、アウトドア好きには格好のロケーションだ。
村内の洋菓子店で焼き菓子を買ったついでに、店頭にあった観光用のパンフレットを手に入れた。素朴な風合いのボール紙に手書きで「渡り鳥の地図」というタイトル。開くと、マガンと思われる渡り鳥が主人公の、何というか脱力系の漫画が描かれている。
二羽の渡り鳥が新篠津村に立ち寄り、キャンプやゴルフをして遊んでいる人々の姿を上空から見かける。鳥A「ここの人間は楽しそうだな。まあ鳥には関係ないけど」。鳥B「帰ろう」。鳥AB「いいところだったね」と言って並んで飛び去っていく。手に取ってもらわないと伝わらないと思うけど、ユーモラスでちょっと詩情が感じられて、なかなか素敵なパンフレットじゃないか、と思う。
*しのつ公園キャンプ場/新篠津村第46線3丁目