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萩尾望都の諸作品のテーマと継承

萩尾望都の諸作品の解釈とテーマやモチーフの継承について、萩尾望都作品論。

「ハーバル・ビューティ」は、1984年に発表された短編SFです。


特別有名な作品ではありませんが、「集合意識」という重要なモチーフが取り上げられます。
そして、それが「母性的」なもの、「若返り(不老)」といったモチーフ、「排斥」のテーマを結び付けられています。


この「集合意識」は、「マージナル」や「バルバラ異界」といった重要作の重要なモチーフとして継承されます。
また、「若返り(不老)」も、「バルバラ異界」や「ポーの一族」新シリーズの重要なモチーフとして継承されます。

 


*「ハーバル・ビューティ」掲載


<祝祭と集合意識>


「ハーバル・ビューティ」は、夜来香星にまつわる物語です。
この星は、太陽から遠い白夜が続く星です。
夜来香星人は、7年ごとに訪れる革命と呼ばれる時期に交配します。


これは、「銀の三角」の銀の三角星のパントー人が6年ごとに訪れる朝に交配するというモチーフを継承しています。


また、これを祝祭と見れば、同時期に描かれた「偽王」のヴァルーファルー国の描写と似ています。

 


夜来香星人は、半植物人間で、女性は根を持ち、大地から養分を吸い取ってそれを子宮とします。


夜来香星人の重要なモチーフは、革命の時に「集合意識体化」して「若返る」ことです。


「集合意識」というモチーフは、過去作では描かれていないのではないかと思いますが、「マージナル」や「バルバラ異界」に継承されて重要なテーマとなります。


「集合意識」は、「スター・レッド」で提示された、超能力者が他の人間の精神に無意識のうちに影響を与えてしまうという問題の延長上のものでしょう。


また、祝祭の時の人間の狂乱状態の意識は、象徴的に一種の「集合意識」だとも言えます。


「若返り」というモチーフは、「ポーの一族」にありますが、「バルバラ異界」に継承されます。
「不死」や「不老」と言い換えれば、「精霊シリーズ」からのモチーフです。


この「不老」を「集合意識」と結びつけた点は、「ハーバル・ビューティ」の興味深い観点です。
つまり、「集合意識」に年齢はなく、「個的意識」が「個的な時間」を生み、それが象徴的に「老化」を生むということです。


個的になる前の意識、それを体現する「異質な者」は、象徴的に、不死・不老であり、その状態になることは「若返り」なのです。

 


<ハイブリッドと排斥>


主人公のルゥは、夜来香星人の母と地球人の父のハーフであり、女性ですが自分を男性だと思っている人物です。


ルゥは、白い髪で、青いビー玉のような目を持っています。
つまり、「異質な者(排斥される者)」を表現する身体的な特徴を持っています。


ですが、ルゥはハーフなので、革命の時に、「集合意識」に同化できません。


「集合意識化」する夜来香星人は、人間から見えれば「異質な者(排斥される者)」ですが、ルゥは、そこからも「異質な者(排斥される者)」なのです。


つまり、ルゥは、意識と無意識、排斥する者とされる者のハーフ、結合体なのです。


「二重に排斥される者」であるという点では、「ポーの一族」のエドガーや、「スター・レッド」のセイから継承するモチーフです。

 


<内なる女性性と母性的なもの>


ルウが「内なる女性性」を持つというモチーフは、「11人いる!」のフロル、「一角獣種シリーズ」のタクトを継承しています。


ですが、短編ということもあってか、恋愛によるその解放という物語には発展しません。

 


夜来香星人の女性が「根」を持ち、それが「子宮」になるという特徴を持ち、この「母性的なもの」が「集合意識」と結びついたモチーフになっています。


「子宮」や「母性」のモチーフは、「スター・レッド」にもありましたが、この後の作品では、「マージナル」、「残酷な神が支配する」に継承されます。


一方、「根」は「大地」と関連し、「故郷の惑星」としての「地球」や「火星」のモチーフとつながるので、この点では、「あそび玉」、「スター・レッド」を継承します。

 


以上のように、「ハーバル・ビューティ」は、「集合意識」というモチーフを導入し、それを「母性」的なものと結びつけました。


そして、主人公、つまりは、我々の人間を、「個的意識」と「集合意識」の結合体(ハーフ)と位置づけました。
これらの点で、この作品は特徴的です。


ですが、短編ということもあって、「個的意識」と「集合意識」の関係を深く追求することはありませんでした。