かのんのお部屋 -25ページ目

かのんのお部屋

日々いろいろ思ったことを☆

私が位山に興味をもったのは、9年前の事。
同じく興味をもった他の方々と登ってみようと計画を立てていた。

一度、近くの山に登った事があるくらいで、山に関する経験値も知識もほぼ無いに等しい状態でのことである。

もちろん、位山についてもよくわかっていなかったので、情報収集を兼ねて登山口あたりまで様子見に行ってみた。念のため、近くを通った人にどれくらいで登れるのか聞いてみる。

「2時間くらいで登れますよ」

この言葉を真に受けた私は、それなら大丈夫かもと嬉々として計画を推し進めていたのだが・・・この計画は途中で頓挫することになる。

その後、流れから山に登るようになり、知り合いの登山仲間に何度もこの山の事を伝えていた。しかし、私の登りたい気持ちとは裏腹に、これがなかなか実現しなかった。

そこが平地ならば、迷わず独りででも行ったであろう。しかし、山となるとそう簡単にはいかない。山での環境は平地でのそれとは全く違ってくる。経験から、ほんの少しの油断が命取りになることを肌で知っているので単独行動はかなり勇気がいる。

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「どんなに低い山でもいいので、一緒に山を登りませんか?」

昨年の秋口、おなじ山岳会に入っている登山仲間からこんな提案をうけた。

私達が入っている山岳会は同時に山岳救助も担う組織である。だからだと思うが、体力もスキルもレベルがかなり高い。訓練で警察や消防の方々と行動をともにすることもあるほど。体力もスキルもなく、訳あってこの組織に入ることになってしまった私には、レベル差がどこまでもついてまわる。それは、彼女もおなじだったようだ。

持って生まれた身体能力というのもあるだろうが、それ以上に私達には経験が不足している。だから、経験を積みたいのだが、山岳会の中では私達レベルでの登山はできないのもわかっていた。レベルの高い山へのお誘いばかりだからである。自分のレベルにあった山で経験を積み、徐々にレベルアップをはかりたいのだが、それが叶わない。彼女が私を誘ってきたのは、そんな経緯からだった。

(独りでは無理でも、二人ならば行けるかも?)

実は、位山以外にも前々から登ってみたい山はいくつかあったのだが、独りで登る勇気はなく、かと言って誘うあてもなく・・・どうしたものかと思っていたところだった。彼女なら、山の装備もあるし心得もある。全くの素人ではないので、パートナーとして良いかもしれない・・・妙案だと思った。

ただ、である。

どこにどういった山があり、どれくらいのレベルでコースタイムはどれくらい・・・という山の情報、地図を読み、気象を読み、どれくらいのペースで登れるか?といった山での行動判断に関しては、どうやら彼女はよくわかっていない感じなのが話していてわかった。「自立した登山者」として、2人ともこれが出来ているのが理想なのだが、どうやら彼女にはここまでのスキルはないようなのだ。

実地での経験と山岳講習を受けて多少は勉強をしてきているのが功を奏してか、自身に多少のスキルがあるとわかり、私がリーダーを勤める形で登山を計画。いくつかの候補が出ていた中に位山も入っていた。

しかし、お互いの都合がなかなかつかず・・・ようやく、都合がついたのが、先月の半ばであった。

実は、この位山。

今年になって、何人か登りたいという方々にであっていた。彼らは、歴史を深く勉強されている方々で位山への憧憬はかなり深い。是非にともと言われてはいたのだが・・・山の経験が全くないのが問題だった。おそらく、ご一緒するとなると私が導くかたちになる。自分も経験がない山で、初心者同然のこの方達を導くことが果たして出来るのか?自分のことで精一杯な今の私にとって、これはかなりリスキーなことだと判断。その申し出は一旦横においておいて、まずは私自身が経験してみないと始まらない。

こんな感じで自然と「位山」への照準があってきた。計画が頓挫した9年前にはなかった流れである。登れる時がようやく来たと思った。

「登ってよし!」

そう、許しを得たような感覚だった。

登山当日は、台風と台風の狭間で、奇跡的に晴れ間に恵まれた。
しかも、夏なのに「秋晴れ」というなんとも不思議な天気。

秋晴れの中、暑くもなく寒くもなく。
夏の間、連日続いた猛暑からかなりの暑さを覚悟していたため、非常によいコンデションで登ることが出来たのがありがたかった。

想定していたコースタイムで移動が出来、登山そのものは順調。
何の問題もなく頂上へたどり着くことが出来た。
若干、雲があるが「御嶽山」や「乗鞍岳」もよく見える。

頂上付近にある「天の岩戸」と呼ばれている磐座も圧巻だった。
ここだけ結界が張られていたため、神域なのがわかる。
おそらく、位山の中でここが非常に重要なところなのであろう。

ただ、そこから巨石群を巡るコースに進むか否かで迷った。

もちろん、せっかく来たのだから見てみたい。しかし、ここを進むか否かで、下山への時間が大幅に変わってくる。巨石群まで1.5kmとあるが、どんなコースになっているのか行ってみないとコースタイムもつかめない。かなり迷ったが、大まかな下山完了時刻をはじき出し何とかなりそうだと判断。行ってみることにした。

実は、この巨石群へは別ルートを使えば車で途中まで来られることを地元の方から聞いていた。かなりのロングコースになるが、もちろん歩いて行くことも可能だ。巨石群に行ってみたかったのは、そこがどんな道なのかある程度の状態を掴んでおきたいと思ったからもある。

巨石群への道は、思いのほか険しかったが納得のコースだった。今までも、いくつかの巨石群へ行った事があるが、そういった史跡はほぼ山の中にある。だから、こういった険しさはある意味当たり前なのだと知っていたからだ。

かなりのアップダウンを強いられたが、こちらも想定したコースタイム内で移動できた。

あとは、下山をするのみ。
黙々と下山をすすめ・・・ほぼ、想定内で下山をすることができた。

結果、登り4時間下り2時間。途中、巨石群への移動に1時間半。日のあるうちに戻ってこれた。

「2時間くらいで登れますよ」

この結果からもわかるように、9年前に聞いたあの言葉は真に受けてはいけなかった。これは、健脚者向けのタイムだ。実際に、頂上で出会ったある登山者は、ここまで1時間で来たと言っていた。かなりの強者である。ある情報では”登り3時間下り1時間”とも言っていたが、その人のペースでタイムはバラバラ。ネットなどの情報は鵜呑みにしないことが重要だと思った。

私は、経験から自分のペースがかなりゆっくりであることがわかっているため、コースタイムを割り出すときはマップに書かれたコースタイム情報に上乗せしてタイムを割り出すようにしている。これは、山岳会で先輩に教えていただいた方法だ。これができないと、山での行程計画は立てられない。

今回の位山登山は、今までの登山とは全く意識が違ったものになった。今回の登山は、誰にも頼らないで自己責任のもと行う必要があったのだ。下準備から、登山の行程計画、登山届、山での判断、諸々全てを自分が責任をもつというのは簡単ではなかった。それに加え、同行者を安全に導く責任もある。自己責任以上のものがついてまわるリーダーという立場は責任重大だ。甘えてなどいられない。今までも、自己責任で動いていたと思っていたが、リーダーを勤めてみて初めて「誰かが何とかしてくれる」という甘えがどこかにあった事を思い知ったのである。

9年もの間、位山に登れなかったのは、ある意味当然の事だったのかもしれない。
色々な意味で「自立」した一人の人間としての準備が出来ていなかったのだから。

ようやく、何とか準備が整った。

その第一歩が一位の「位山」。
大変光栄な事だと思った次第である。