赤ちゃんは、コウノトリが運んでくるという。
なるほど、コウノトリの巣は今回の旅で初めて目にしたが、どの巣もかなり大きいので、人間の赤ちゃんも中に入りそうだ。
コウノトリは何故か教会の鐘のある場所に巣を作る傾向があり、確かに僕らは何度も何度もそれを目にした。
この数日で、偶然にも、日本の友人たちから赤ちゃんが産まれたという報告が何件も届いた。
どんな宗教だっていい。宗教の壁など越えて、コウノトリの話を前提とするならば、産まれてくる前と同様に美しい鐘の音をたくさん耳にするような人生を歩んでくれたら良いなと思う。
さて、今日は山の中の田舎道を進む道だ。
野鳥の声が非常に美しい。録音して何度も繰り返し聴きたくなるほど美しい。
普段は鳥の声を愛でる習慣は無いが、旅先で耳にすると、なぜか心からリラックスする。
姿の見えない鳥の声を聴きながら山を歩くという贅沢は、まさにプライスレスだ。
山の中を進むと、パッと開けた場所があり、そこに巡礼者たちをもてなす休憩所があった。
ほんの一坪ほどのスペースに、飲み物やフルーツが置いてあり、巡礼者たちはセルフサービスでそれらを口にしてよい。
対価として心ばかりの寄付を入れればよく、必要ない者は通り過ぎる。
このブログにも何度か書いたが、僕はこういう場所に非常に感謝をしている。公からの援助なく、個人が好意でやってくれているのだ。
今日の場所は若い男女が1人ずつおり、多分カップルの彼らが世話人として待機してくれている。話をしてみると、女性のほうはこの山中に住み、男性のほうは毎日通ってきているという。
とても気持ちのよい空間だったので、2人に「ここは、とてもいいオアシスだね!」と伝えると、男性のほうが僕のバストン(杖)を見て、「君のバストン、壊れてるのか?先っぽが無いじゃないか」と言ってきた。
僕が「うん。壊れてるんだ(笑)」と言うと、「良かったら、そこにあるのを持って行くといい」と、誰かが忘れていったか置いていったキレイなバストンをくれた。
なんてツイてるんだ。こうして僕は、チェコ製の立派なバストンを手に入れた。
経由した村、サン・ユスト・デ・ラ・ベガの教会に寄ったが、例のごとく閉まっていた。
諦めて先に進もうとしたら、なんと教会の向かいの家から出てきたおばさんがカギを開けてくれた。管理人なのか?
内部が変わったデザインの教会だったが、庭も丁寧に手入れされていたし、僕らのために窓から光を入れてくれたり祭壇の照明を点けてくれたりした。ありがたいことだ…。
アストルガという、あのガウディが設計した司教館が有名な街に入った。
街に入ってすぐの教会では、クレデンシャル(巡礼手帳)にスタンプを押してもらうため(スタンプは履歴を残す重要なアイテム)に、祭壇の脇の神父さん専用の部屋にまで入れてもらえた。毎度毎度、ありがたいことだ…。
アストルガの市庁舎の前では、先日アルベルゲ(巡礼者用の宿)が一緒だったフランス人のジャンポールとブライアンに会った。
2人から、「日本にもこういう道があるらしいな。熊野古道っていうんだが。」と言われたので、僕はわざわざ日本から持ち込んだ御朱印帳を見せた。
すると、ジャンポールはそれを気に入ったらしく、ジャイアンみたいに「これは俺がもらった!」と胸に抱きかかえ、ブライアンに注意されていた。
こんなチャーミングなおじさんに、私もなりたい。
アストルガのカテドラルは、精緻な外観、巨大な柱、高い天井が印象的であった。妻はこの場所を気に入ったようだ。
ようやく、今日の目的地の村に到着。
たまたまこの村にあったバルが、この巡礼路をテーマにした映画『サン・ジャックへの道』のロケ地だと妻が気づき、バルの親父さんにその話をしたら「まさにウチの店なんだ!」と喜んだ。(興奮した彼は、注いだばかりのビールをひっくり返してしまうほどだった)。
村に一軒しかないアルベルゲは、飲み物がセルフでタダだった。晩飯は自炊。宿に着いてから履いている下駄(少し重い)を褒められた。
続く。
本日
サンティバニェス・デ・バルデイグレシアス~エル・ガンソ
(スタート地点から533.8㎞)