(アワイチ2のつづき)
【行程】
一日目65km; 洲本〜南淡路水仙ライン〜賀集八幡交差点〜洲本インター前〜洲本
二日目 ; 雨天中止、島内観光
三日目59km; 松帆の郷〜道の駅 東浦ターミナル〜志筑交差点〜伊弉諾神〜シェフガーデン〜松帆の郷
四日目41km; 慶野松原〜賀集八幡交差点〜うずしおライン〜丸山海水浴場(迂回)〜Kariko Resort〜慶野松原
Kariko Resorts
漁村の傾斜地に立つ民家と林の間を縫うように複数の路地が入り組んでいる。目を奪われるような特別な何かがあるというわけではない。民家も路地もいたって普通である。本当にこの先にパラダイスがあるんだろうか。我がebike Pegasusもこころなしか不安げに坂を見上げる。しかし、どの小路も行き止まりになることはない。全ての小路は頂きに向かっていて迷うことは皆無だ。
やがて、路地を覆っていた民家や樹木がまばらになる。そして、たわんで絡んだ糸がぱらりとほどけるようについに小路がひとつだけになる。
すると、いったいどういうことだろう。白昼夢のように少しぼやけた光の中で日傘をさし白いワンピースをまとった女性が花壇に咲いた花を見ている。その背後をシュールに歪んだ時計に見える雲が異常な遠近感をもたらして現実とは到底思えない速さで空が広がっていく。春の海もろとも霞んでいた山々が、油絵の具を直接塗りたくった、無数の線で描いたような抽象的で過度に鮮明な極彩色の山々となってコントラストの曖昧な花壇をとり囲む。花壇の先にあるエントランスらしき門の向こうは坂になっていてここからは窺い知ることができない。しかし、門の奥から何やら陽気な音楽や歓声、花火や雑踏の音が聞こえてくる。それは、鼓笛隊がにぎやかなマーチを奏でながら仮装した長い脚の怪人や火吹きやピエロや繰り返し空中回転をする曲芸師やらを引き連れて気持ちを抑えきれなくなった観衆も加わっての盛大なパレードを思い起こさせる。
僕とPegasusは魔法にかかったように必然的に楽しげな音のする、草木で飾られたエントランスヘ誘われる。
アワイチ 四日目
チェックインのデスクにはMichelin Kobeと書かれた盾が飾ってあり、自転車を部屋まで上げさせてくれた。Pegasusを充電するのにとても都合が良かった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240425/16/easygoeasyway/db/fd/j/o1080081015430327943.jpg?caw=800)
宿の裏手にバームクーヘンの店がありみやげにそれを買い、宿の窓から見える慶野松原と呼ばれる浜を散策してから露天風呂に入る。夕食は予約しておらず近くにレストランもなかったのでコンビニでチキン南蛮弁当を買ってそれを食い、たまたまカープの野球中継をやっていてそれを見ながらいつの間にか寝た。
翌朝、近くを流れる川があり、Pegasusと河口まで行って釣りをした。釣りをしていたら堰堤の上をこちらに向かっておじさんが歩いてきた。おはようございます、と挨拶すると、メバル?と聞くので頷くと、シーバスもヒラメもくると言う。そんなのがきた日には、このタックル(釣り装備)だとおおごとである。ロッドが折れるか、8:00の朝食に間に合わないかのどちらかだ。もちろん、ワームの尾っぽをかじり取られただけで何事も起こらず、護岸石にいた大半はたわんだ糸を解くために費やされた。さて宿に戻るかと堰堤をよじ登ろうとするが、登れない。肩よりも低い胸の上あたりの高さに過ぎない堰堤である。腕の力が落ちているのだ。こんな低さの堰堤で救助応援を呼ぶにはあまりに恥ずかしく、ゴアテックス仕様の靴に傷がつくと思いつつ致し方なく護岸の壁に靴の先をこすりつけてよじ登った。次からヒンズースクワットだけではなくて腕立て伏せもしないといけなくなってしまった。努力の要る桃源郷は桃源郷じゃあないぞ、と思いつつ、しょうがないかと諦める。
釜炊きで出されたご飯をおかわりしてから、10:00過ぎに宿の駐車場にそのまま車を停めさせてもらって、アワイチ四日目をスタートする。
R28まで南東に進み、一日目のスモイチで北上ターンした賀集八幡交差点を今日は南下する。
福良の手前でうずしおラインに入り、福良警部派出所前の交差点を右に折れて坂道を行くのだが、この交差点が変則で信号が青に変わるのにかなりの時間がかかった。
やがて、瀬戸内海国立公園の看板が出て左折しそうになるが、今日はナビゲーターがいないので立ち止まり自分でマップを調べて直進した。ほどなく海岸に出てしばらく行くと第一休憩地点のかるも公園に到着。
ここは海岸沿いに車進入禁止の道が300mくらい続いていて、東の向こうには鳴門大橋が見える。春のうららかなる日差しのもと、休憩にはもってこいのロケーションである。ドローンの練習をしている人が一人。そこから100m距離をおいて記念撮影をして、さて釣りでもするかとPegasus を見ると釣り道具を車に置き忘れたことにようやく気がついた。おぉ、と空を仰ぐとドローンが偵察に来ていてムッとして100m風下にいるパイロットの方を向くとドローンは引き返していった。
一昨日、雨の中を行ったうずまちテラスでデジャヴュを見るかのように再び鳴門大橋を眺め、あろうことか道を間違えて坂のはるか下にある工事中の道の駅の駐車場まで行き、そこからうずしおラインに戻って北上を開始。
阿那賀公園でビデオを撮っていたら、サラだった128GBのSDが容量エンプティとなり驚く。腹が減り、丸山公園の先の喫茶店でカツカレーとコーヒーを注文した。ここからゴールの慶野松原までは10km程度である。今日ここまでかなりの坂を上ってきた気がするが、もうこの程度の距離では物足りなくなってきた。
風力発電が数機見える丸山海水浴場の手前で棒振りの人から、この先、工事のため迂回してください、と言われる。仕方なく海岸線を一山越えた裏道を行くことに。途中お局の塚なる案内板に興味をそそられたがこういうのはなんとなく怖くてスルー。この三日間一度も見かけなかった淡路牛の牛舎横を通り、先程迂回した辺りで見た風力発電を左手に見て30分は優にかかった迂回を完了する。再び海岸線に戻り後ろを見ると、通行不可区間は1kmにも満たないことがわかる。どこかの道で、斜面に這いつくばった一匹の茶色いヤギがこちらをみていた記憶があるが、それはこの迂回路だったか。あまりにも現実味のない感じで記憶が定かでない。
この先の岬の突端に、冒頭のKariko Resorts がある。私にとってはとても不思議な場所だった。羽のはえた妖精や天使が出てきそうな感じがした。ウェディングチャペルそばのアンティークショップのような店にはタイムマシンになる骨董時計が置いてある気がしたし、グランピングの丸いテントは巨大なサーカス小屋に見え、インスタ撮影のための海に向かってジャンプするブランコにはハイジが乗っているように見えた。
USJやディズニーランドのようなきらびやかで大掛かりなあえて虚構とわかる虚構ではなく、現実味のないヤギとも違って、日常の中の幻想というか。。。そこにいると、どこか遠い城に迷い込み、とても美しい機械人形の女性とチークを踊るFelliniが描いた晩年のカサノバになった気がした。
編集後記
Kariko Resorts のグーグルマップ情報も自分で撮った写真も、その時に自分が感じたイメージとは随分違うので、貼付けなかった。もしかすると、本当に魔法にかかっていたのかも、とか。。。
リゾート地内には売地の看板も多くあったが、ここに来るまでの民家は山の裏手に立っていた。別荘なら景色優先の海側だが、生活にはやっぱり風裏なんだろうな、とか。。。
最後のほうは太字だらけでしつこいな、とか。。。
前回の琵琶湖伍分の四から比べると自転車レベルがかなり上がっている気がする。平均時速も15.7→17.3で10%アップ。そろそろ一日60kmでは物足りないな、とか。
あと、めんどくさいけど腕立て伏せでもしておくか、とか。
そろそろキャンプでもするか、とか。
そういえば。。。1日目の晩飯を食いながらの友人との話の中で、トランプさんが大統領になったその日、祝賀会でかけたローリングストーンズの曲名を思い出せなかったのだが、それが3日目のイザナギノミコトジングウでyou can't always get what you want であることを唐突に思い出したのはなんでだろう、脳の不思議さだな、とか。。。
結局、津名ー洲本間、郡家ー慶野松原間を走ってないけど、アワイチ150kmは超えているから、完走ということで、とか。。。
走行データ
・平均時速: 17.3km/h
・max時速: 45.9km/h