ホテル再建計画 | 御堂筋てくてく日記

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会社帰りにいつも淀屋橋から難波まで歩いてます。銀行員時代にこの「御堂筋てくてく日記」の名前でブログを書いてたので、また復活させてみました。

その19 「ホテル再建計画」

大阪の繁華街にある某ホテルは、大赤字が続いていた。ビジネスホテルのようでありながら、過去の企業向け宴会獲得での成功体験が抜け切れず、宴会場が無駄に広い中途半端なシティホテルとして存続していた。

そのホテルの1階に銀行の支店が入居していたのだが、合併に伴い閉鎖することになった。大赤字のホテルである。そこに収益源の銀行が閉鎖することでますます窮地に陥るのは目に見えていた。

銀行とこのホテルとの間に交わされていた賃貸契約は変わっていて7年間もの長期契約になっており、1年前に契約更新したばかりである。あと6年2ヶ月契約が残った状態での解約である。違約金は100%賃貸料全額支払いということになっており、月700万円の家賃だったので、5億2千万円もの金額を一括支払いすることになる。

ホテルにとって一見大儲けに見えるが、利益が出れば今度は税金を払わねばならない。そのキャッシュがない。決算がおかしくて、実質赤字なのに取り繕っていた。

まあ、こんなホテルなので、銀行としてはこれ以上このホテルに関与したくなく、貸している融資金5億円をこの違約金支払いで今回相殺しようとしていた。

その交渉になぜか僕が行くことになった。確かに賃貸契約は総務担当やけどね…。

出てきたのは、全く話にならない二代目社長と、金庫番の経理役員である。社長は細面で色白のちょっとアホそうな感じである。繁華街では、もてそうでもあるが、余りにも線が細い。一方の経理役員はかなりのやり手番頭という感じである。粉飾はこいつが総指揮でやってきたのだろう。

「よろしくお願いします。」という社長にむかって、
「融資金はこの違約金で全額返済してもらいますのでイイですね。」と強く念を押すと、オドオドとしながら経理役員の顔を見る。
「アホか、お前が社長やろ。いちいち他人の顔色見るな!」と大声で言うと、ポロポロと涙を流し出す。

あー、またこれや…。男が泣くなよ。と思ったが、経理役員には一定の効果はあったようだ。

他にも借りまくっているので、違約金が支払われたと同時に引き出しを行われないようにしなければならない。特にこの経理役員には気をつけなければ、5億円が振り込まれたと同時に高飛びするかもしれない。

それを牽制するため、強く出るために僕が選ばれたのかもしれない。

「では、振込先口座の通帳を預かりますので、持ってきてください。」とお願いした。違約金振込当日は振り込む直前まで口座取引停止しておき、停止解除と同時に違約金を振りみ、それと同時に、5億円の融資返済処理を一気に行う予定である。

瞬間に引き出しされないように念のため通帳をこちらに握っておくということだ。この口座にはキャッシュカードも作られていたが、もちろん使えないようにしておいた。

実はもっと複雑な仕組みでこの会社の税金免除などのスキームを適用したのだが、詳しく書き出すと小説が一本書けそうなので割愛する。

とにかく、振込当日は僕はこのホテルに行き、社長と経理役員とその手下の経理課長達を応接室に待機させたまま、携帯電話で振込実行の連絡をすることになっていた。二人を動けないようにするためだ。

準備OKで一気に振込と融資返済をするのだ。せっかく5億2千万円が振り込まれるのに、瞬時に融資金5億円となんやかんやで全額なくなるので、可哀想だが、仕方ない。

まあ、無事、融資返済が完了してそのホテルはあるスキームで存続することになったのだが、終わった後、社長から、
「鈴木さんのおかげです。」と感謝された。

何のおかげかよくわからないが、この社長に繁華街ならではの顧客確保方法を指南しておいたし、実は(アイデアは僕ではないけど)銀行撤退のあとのスペースにパチンコ屋を入れる手はずを整えておいたのだ。

かなり高めの賃貸料を払える店は他になく、銀行ではご法度なのだが、パチンコ屋を入れることでこのホテルを再生させることにしたのだ。(これ、書いても良かったのかな…。)

あれから12年。実際に確認しに行ったところまだパチンコ屋が入ってました。ホテルも立派に再生していました。

考えてみれば、僕っていつも結構イイ仕事するよなぁ、と思った。(自画自賛)

ま、誰も言ってくれないけど…。