不動産の売買取引をしていたころ、「境界確認」ということをよくやった。これは隣地との境がどこにあるのかというのを、隣地の所有者と確認して、自分の土地の範囲を決めるというとても地道な作業なのだが、これにまつわるエピソードはたくさんある。
京都の紫野での社宅の売却案件では、隣地のおじさんの挙動がどうもおかしい。よくよく聞くと登記簿に載っている所有者はその人のお父さんでもう8年前に亡くなっているというではないか。
しかしながら、不動産取引ではこういうこともよくある話で、その場合は、相続人全員の同意があれば特に問題ないので、「じゃあ、ここに相続人全員の判子と印鑑証明書いただけますか?」と聞くと、「それは無理です。」と言う。聞けば姉二人が一人は海外、もう一人も関東に住んでいて疎遠になっているとのこと。「それでは、こちらで郵送させていただきますので、ご住所とお名前を教えてもらえませんか?」と聞くと、「それも無理です。」と言う。
「姉貴二人に黙って、勝手に住んでいるんです。」
「はぁ~?」
「相続手続きも全くしてません。」
「え~?」
「だから黙っといて欲しいんです。」
「はい…。」
「このまま、僕らが住み続ければ時効で僕らの土地になるんです。」
「ああ、そういうことですか…。(民法162条のことかな?善意無過失で10年だな…。)」
「あと2年なんです。そっとしておいて欲しいんです。」
「なるほど…。(やっぱり…。)」
しかし、判子を押してもらわなければ、こちらの境界が確定せず、こっちの土地が売れない。
結局、すったもんだのあげく顧問の土地家屋調査士さんの力で、なんとかその人だけの判子で大丈夫なようにとりはからってくれた。
世の中にはいろいろ事情がある人がいるんだなと思った次第。相続の話は銀行時代、山のように抱えていたが、どこもうまくいっていない。財産は残さないのが一番だなとつくづくそう思います。
あとで聞いた話だが、隣のおじさん、奥さんにも遺産のことを言ってなかったらしく、僕らが去った後、大騒動だったそうで…。隣の土地を売るだけの話だったのですが、大変であります。。。