言葉とは,受け取りようによっては素晴らしい?飛躍や妄想へと誘ってくれるものらしい。

 

言の葉風というぐらいだから,発した本人の意図とは全く違う色彩を帯びて,相手の心の襞(ひだ)に入り込み,思いがけない興奮を引き起こしたり,頑なになっていた狭き門を開いてしまうことがあるのだろう。

 

所用で長いドライブを強いられていたとある中秋の昼下がり,私は路肩に車を寄せて停まり,運営に携わっていた講演会の準備について思い巡らしていた。

 

ふと,人集めに一役買ってもらっていた,ホテルや空港等に土産物を多く納める地方名士の社長の顔が浮かんだ。

 

悪い人ではないのだが,定期的に賞味期限のラベルを一家総出で張り替えては「商品の延命」を図る話だの,

 

どこぞの老舗旅館の創業者会長には最近,90歳になろうとするのに自分の娘と同い年の還暦の「彼女」ができただの,

 

某有名割烹では,仕入れがイオンで800円の刺身を4,000円で出すんだだのという,当方としては別に知らなくてもいい「地域情報」を微に入り細にわたって聞かせてくれるのには些か閉口する人物だった。

 

なんというか,よく言えば無邪気で,金の苦労を知らないボンボン育ちで野放図に生きてきただけあって,いくつになっても口に適度の抑制!?が効かなかったのかもしれない。

 

私は,講演会チケットの売れ行きを聞いておこうと思い,彼のいかにも薩摩隼人らしい引き締まった風貌を思い浮かべながら電話をかけた。

 

「は~い。元気してる?」と,いつもの快活な様子の声がした。

 

「ああ,今ちょっと休憩中なんですが」と私が言った刹那!?間髪を入れずに嬉しそうな声で「休憩?」「じゃあ裸なんじゃないの?バスタオルくらい巻いてから話さないと嫌われるヨ~♪」と彼は言い,

 

すぐに「でも,バスタオルを主砲にひっかけてずっと落ちなきゃ彼女は感激するだろうなあ~」と付け加えたのだった。

 

なるほど,稀代の遊び人社長としてはそう反応したか。しかしねえ~そんなパラダイスならいいんだけど,こちらは一人のロングドライブでそれどころでは・・・と思いつつ,

 

「はあ,まあそのお,真っ白なビーチで美女に囲まれて芳香ただようフラワーバスにたゆたってます と言いたいとこですが全然で」と答え,チケットの残数を確認したのだったが,

 

社長が高血圧気味なのを思い出した私が,最後に一言「黒豆茶を日々召し上がってくださいよ。あれは体液の循環が非常に良くなると古来伝わりますから」と付け加えるとまたも!?

 

「体液?」と再び敏感に反応し,今度は真剣な忠告調の声色に変わって「あれはね,あたり構わず相手構わず撒き散らしちゃいけないよ」と御託宣が下った。

 

いや,性犯罪を得意中の得意とする反社会的反日特殊法人のNHKじゃあるまいし,それは当然そうだが,私としては血液やリンパ液の循環を総称して言ったつもりが,またしても,生命力旺盛な社長の妄想と誤解を招いてしまったのだった。

 

電話を切ると私は,この地方の宴席でまるで昨夜の出来事のようによく語られる,女装した美男子(だったのだろう!?)日本武尊に討たれた川上タケルの故事を思い出した。

 

今際の際(いまわのきわ)に,小人数で敵地に潜入して敵の首領を単身討った若者の武勇を褒め称え,これよりは日本武尊と名乗りたまえと言い残した川上タケルもまた立派だが,

 

つまりは,あれは熊襲・隼人族の最大の弱点である「美人に弱い」ところを突かれたんだなあと,「休憩と体液」へのクイックレスポンスを思い出しながら車を走らせた。

 

しかし,敵国群が国内に埋め込むスリーパー達や,その走狗である売国奴共が,必ずしも隼人族の特性ばかりともいえない「最大の弱点」の連綿とした!?歴史を研究分析していないはずがない。

 

要路にある者達はぜひとも心してかかってもらいたい などと,上品ではない妄想への笑いから一転して憂国への思いへと切り替えつつ,

 

でもやっぱり,好意に満ちた思い出し笑いを繰り返しながら私は家路についたのだった。

神代から 美人に弱い 隼人族