事務室の窓口に授業料を払いに来た生徒がいた。


 

 学年でも10位以内に常に位置する学業成績優秀な男子だったので,


教師間の評判も良く,私の高校時代とはまるで違って,妙な変則服を着ては


やたらとイキがるようなところもなく,典型的な「優等生」に見えた。



 この子が財布を取り出すと,札をポンと投げてよこした。



 一瞬にして血が逆流した私が「おい 金は投げてよこすもんじゃないぞ!


おまえはそんなことも知らんのか?」と強い語気で言うと



 これまで全く受けたことのない躾だったらしく,事態を飲み込めずに呆気に


取られた表情で口をポカンと開けていたが



 我を取り戻すと,休憩時間が終わってしまうじゃないか!早くしろよ と


言わんばかりのイラついた様子を無言で示したから



 胸倉を取ってチョーパンかましてから,右ストレートを入れてやりたいのを


辛うじてこらえ,「最低の礼儀だから覚えとけ!そんなんじゃ進学して社会に


出てから恥をかくのはおまえだぞ。わかったか ああ?」と怒鳴ると



 不承不承に小さく頷いて帰っていった。



 補習、補習で成績を上げ,偏差値の高い有名大学に通って職員室に「凱旋」し


ティーチャーズペットとしてチヤホヤされた挙句に,恥知らずな税金泥棒の官僚


になって国民へパラサイトでもする気か?



 ずいぶん飛躍した怒りに深呼吸しながらも,こんなことぐらい小学生までに


躾を終えとけよと,学校というよりは親に対して無性に腹が立った。