本土へ戻る春がやってきた。


 コンテナは港から送り出し人は空港へ。


 

 保育園で長男が一緒だった地元の食堂の子が,なぜ行ってしまうのか?と


とても寂しそうにしていたと聞き,自分自身が転校した時の何とも言えない


物悲しさを思い出したりした。



 最後の夜に,地元出身の同僚の家を訪ねると,全盲だった御主人が「寂しく


なるけど,偉くなってまた帰ってきてください」と言ってくれた。



 偉くなる見込みだけは120パーセントなかった私は,心からの御礼を述べる


にとどめた。


 伊仙町という小さな町で真心から優しく接してくれた御家族だったが,私は


おそらく,この仕事ではもう二度と島を訪れることはないような気がしていた。



 皆の前で露骨に侮辱されたことに耐えられず,上司を「貴様」呼ばわりして


机の周りを追っかけっこ?!したりして,荒っぽい生徒から「う~ん さすがに


自衛隊出身は根性あるな」などと変な感心をされたりしたこともあったが



 こういうことがあると,どこへ転勤しようが辞めるまで人事上の嫌がらせが


続くのは狭い公務員の世界では世の常で



 企業と違い,解雇されないだけでもマシということで,評価がずっとマイナス


のままなのは致し方ないことだったろう。