30分ほどで全島を一周できるとのことでタクシーを呼んで乗り込んだ。


 途中、もっとも海抜の高いという丘に登ったが、持っていた缶ジュースを


私がつい飲み干してしまい、片腕に抱かれていた長男がねだるので渡した


ところ、カラと気づいて大声で泣き出してしまった。


 南の強烈な日差しの中に響いた泣き声と、腕に感じていた温もりは、私より


背が高く、容姿もずっとマシな青年に彼がなった今もまだ、いとしさと共に胸に


ある。


 ユンヌ楽園という植物園を観た後で、星の砂で有名な百合ヶ浜に寄った。


 木陰に、白いスーツにバーミリオンのシャツという派手な服装で巨体を


包んだ強そうなオッチャンが立っているのを私が見つめていると


 寄ってきたタクシードライバーが声を潜めながら「あれが与論のドンです」


と怖そうに言った。


 人々が暮らす場ならば必ず何らかの「あがり」があるわけで、あがりがあれば


争いも起きる。


 ドンはドンで島の秩序維持に役立っているのだろうと、私は変に感心した。