休日に徳之島の亀津という町を歩いていると


顔見知りの県職員が公用車で通りかかり、彼は技術主査で工事の


監督員にもなってもらったりする人だったので、私は車に近寄って挨拶した。



見ると後部座席に山のように洋酒の箱が積んである。



「どうしたんすか?これ。まさか○○さん 強盗でもしてきたんじゃ」と


冗談めかして聞くと



「いや いろんな業者が持ってきて困ってるんで、気になる現場を見て


回るついでに返して回ってるとこ」とあっさり答えた。



公金で備品として買った高価なPCを自宅へ持ち帰り、ほとんど私物化


していることを自慢げに女に話す県職のニイチャンもいれば、自分


の車を、スタンドに払う金を惜しんで、せっせと県事務所の水で洗うセコイ


奴らもいるけれど



休日に賄賂を「返却配達」して回る人もいるわけで



衒いも気負いもなく、当然のこととして賄賂を返しに行く彼を見て、私は


鹿児島県もまだまだ捨てたもんじゃないなと嬉しく思った。



都内の公務員官舎では、奥さん連中が賄賂の品定めに余念がないとも


聞くが、つけ届を生活設計の当然の前提とする腐れ役人の一味がいる一方で


地方の暮らしを誠実に支える人間もいるのは救いだ。



それは、離島暮らしでの一服の清涼剤となった出来事だった。