1、2年生による新チームでの練習が始まった。


 

 夏休みに入るとまず、私は部員達に宿題を持ってこさせて一室に集め


午前中は一緒に勉強させることにした。


 

 枕崎市にある布団屋さんの跡取息子で、1年更新の期限付教諭を


していた青年が快く協力してくれたので、彼に数学の指導は頼むこと


にした。



 言葉使いが悪かったり、集合に遅れたり、態度が悪かったりする


たびに、尻に回し蹴りを入れて気合を入れるなど非常に厳しかった


私だったけど、部員達は一人もやめずによく頑張ってくれた。



 学期が終了する前に「成績不振者指導」なるものがあるのだが


学校側からはなぜか、自分たちの指導が不徹底だったとか、夏休みに


登校させて集中的に弱点を補強しようだとかいう発想は全く出ずに



 与えられた「研修権」をズルく使って「自然観察」と偽った「新婚旅行」


に行ったり、マージャンだパチンコだ釣りだにうつつを抜かしたりと



 働かないでも高い給料を取るのが当たり前という感覚なのだが、それ


でいて夏休み中の出勤記録にはズラリと「研修」の表示が並ぶのだった。



 不安になった保護者はやむなく無理をしてでも「塾」の夏季セミナーに


通わせる。通わせる余裕の無い家庭も当然ある。



 法によって保障された「研修権」を盾に取った国賊教員達は自らの


怠惰の結果でもある生徒達の成績不振に口先だけの「指導」をした


後は安楽な夏に逃げ込みながら給料だけはしっかりと「盗む」



 そうでない者にも、二十年を超えた公立学校暮らしで二人ほど遭遇した


ことは、真面目で誠実な教師達の名誉のために付け加えておかなければ


ならないけれど。



 ただ、国家全体のシステムがそうなっていることは紛れも無い。



 根が腐っていて何が育つだろう?世の中から見えない密室暮らしを


良いことに、非常識な感覚を非常識とも思えないままで仲間内の安逸に


逃げ込みながら自らだけの安楽を図って目前の尊い義務から逃げて


恥じることが無い。



 こういった連中に「育てられた」者達がすでに多くの要職に就いて


しまった。



 彼ら彼女らだけを非難するのは当たらない。