住んでいる部落の夏祭りを迎える夕暮れ
私は家へと続く坂道を、いつもとは別の方向から登った。
湾を見下ろす小高い場所へ立つ家へたどり着く途中に
苔むした小さな祠が建っていた。
漁村でもあり、支那大陸との交流もあった薩摩半島の南端なので
マソ神(沿海州の若い女性で海難守護の神)の祠蹟だろうかと
思いながら何気なく通り過ぎ
入浴を済ませてから、小さな櫓が組まれたお祭り広場へと出かけた。
花火まで終わると、広場で会った中学生の男女が集団で借家へ
遊びに来たのだが
男子はともかく女子を家へ上げていることが気が気ではなく
それぞれ家へ電話するように言って、ようやく帰らせたのは
もうかなり遅い時間だった。
眼下の入り江は凪いで、祭りの後の寂寥を潮風が運んでくる。
中学生の男女の他愛ない会話の余韻がまだ響くような部屋の
空気の中
私は、縁側の廊下に仰向けになって、この四ヶ月余りの日々を
振り返っていた。