誉れの夏71


 祖国からのこういった扱いに一矢報いることもなく滅びの道をたどるとすれば、これまで多くの自衛官が捧げてきた命と人生はなんだったのだろう?


 仲間内と数少ないシンパだけの理解にささやかに安住しているうちに、特別職国家公務員としての基盤は打ち固められ、


出生の不透明さは曖昧にごまかされたままで私生児扱いが定着し、危険な作業には即時投入がきくチープレイバーとしてのみ政府に重宝がられている。


 今回もまた、お悔やみの言葉ひとつない、さも迷惑げな事故報道がやや続き、国民はすぐにこの若者の死を忘れる。


 若者が命を投げ出して護ろうとしたのは自分達だと多くの国民は気づきもしないし、たとえ僅かにいたとしてもメディアは当然のこととしてその声を黙殺するだろう。


 彼が愛し、彼を愛した人々には、命を超えた価値を見い出し得た人間と高貴さを共有したという尽きぬ誇りと、身悶えする哀惜の念が深く残る。