誉れの夏60


 三ヶ月ほどの隊付見習期間を終えて、全国各地の原隊から俺達は幹部候補生学校へ戻ってきた。


任官が間近に迫っている。


総合戦闘訓練まで終えたら、沖縄での現地研修を経てから各々の職種毎に全国の学校へ散っていくことになる。


慌ただしさが増してきたある夜に、隊内のクラブで俺とバディは久しぶりに向かい合った。

 

「防大生がさ、帰省途中で船から飛び降り自殺したり、昇進試験に落ちた幹部が自殺したり、隊員の脱走も含めていろんな事を見聞きしたよ」眉から下だけがよく日焼けしたバディが言った。


「部隊の実情を見てこいってことだったろう?それが現実だってことさ。緩んだ規律に士気沮喪に若年者の増長ときた」


「一点豪華主義の装備に相も変わらぬ員数主義もメニューにはございますです はい」自嘲気味にバディが付け加えた。


「十一月に殉職者が出たんだ。演習場で仮眠中に、後方確認を怠ったドーザーに潰されてグチャグチャだ。棺警衛は俺の中隊から差し出したんだが問題はその翌日だ」関西の日々を思い起こしながら俺は言った。


「翌日?」


「正午から一分間の黙祷だった。朝礼で達示されたのに定刻になってみればモータープールでもガレージ脇でも喋ってやがるし、隊舎内でも動きが止まらないのが結構いやがるんだ。


駐屯地全体で実施するはずがこのザマだよ。