誉れの夏52

「初めの一歩だよ。」


「もっとも飼い馴らすって言ったって、馴らさないといけない牙なんてないが。特別職国家公務員なんかに甘んじている限り、未来永劫にアメリカの補完勢力暮らしが続くと思うな。忠誠を尽くす対象が、かつて日本人を極悪非道なやり方で殺戮した奴らだとは笑えないコメディだなあ。脳天気でアホな植民地憲法に従うと宣誓して入隊したってのは結局はそこへつながってくるんだから」


「根っこが腐ったままじゃ花は咲かないし実もならないんじゃないかな」


 足取りが急に重くなったように感じながら俺は力無く続けた。


 腐臭を放つ土壌に弱々しく、それでいて狡猾で臆病な表情を漂わせながら伸びている、どこか男妾のように見苦しい哀れを催してくる奇妙な樹のイマージュが胸に不快にのしかかってくる。


 いつもいつも庇護者の表情をおどおどと窺っている去勢された属領の民。