誉れの夏45


休暇。


山から下りてきて初めての週末を「娑婆」で過ごす。


娑婆なんて俺達は使わない言葉だが、敗戦までは陸軍は「地方」海軍は「娑婆」と一般世間を呼んでたらしい。

 

自衛隊も中に入って暮らし始めてみればあまり世間と変わらないのかもしれない。


喩えは悪いがちょうど刑務所が世間の縮図であるように。ある意味ここも様々な人間性が投げ込まれているからだ。

 

世間といっても大学から直接営門をくぐったわけだから熟知しているはずもないが、バイト先や両親の生活を思い起こしてみてそう思う。

 

むしろ想像していた厳しさが足りないで拍子抜けしたくらいだ。


まず殴られることはないし、こっちがこういう場合は殴ればいいのにと思う場合も含めて、罰は腕立て伏せか駆け足だ。


外出禁止もあるにはあるがたいしたことじゃない。


防衛大学校出身者が言うにはラクチンな教育訓練なんだそうだ。


自分達が乗り越えてきた学生生活と比べて甘くてしょうがないということらしいが、それでいて俺達一般大学卒業者が自分達と同時に幹部へ任官では面白くないだろう。


一般大学出身といっても決して遊びほうけていたわけじゃなくて、それぞれが様々な青春を送ってきたんだろうが、まあ自由奔放に過ごしてきたように見えるのかもしれない。